2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体関連物質のソフトイオン化を目指すナノLDI-MS基板の開発とメカニズム解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
米澤 徹 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (90284538)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 竜也 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (60374584)
|
Keywords | 質量分析 / ナノ粒子 / SALDI-MS / レーザー / ソフトイオン化 / 金 / 白金 / 脱離 |
Research Abstract |
本研究では、表面支援レーザー脱離イオン化質量分析法(SALDI-MS法)に用いられる金属ナノ粒子の合成とその挙動、さらには脱離・イオン化のメカニズム解明に挑戦した。まずは、サンプル用基板を作成するために、さまざまな金属・酸化物・半導体のナノ粒子および異方性粒子を作成した。結果として、その物質、構造、大きさ、形状がいずれも有機物の脱離に大きく影響することが分かった。そこで得られた粒子を用いて塗布した基板上に、波長を変えてパルスレーザーを照射したところ、可視光では、金ナノ粒子がそのプラズモン吸収で効率のいい脱離・イオン化性能を示したのに対し、紫外レーザーでは高い脱離・イオン化性能を示す酸化チタンナノ粒子は可視光では負の効果を示した、つまり脱離・イオン化する分子の量を平板基板よりも少なくしてしまった。この結果は、表面支援におけるレーザー脱離・イオン化においては、単純にパルスレーザー照射によって発生する局所的な熱による分子の基板表面からの脱離ではなく、光反応が脱離・イオン化に関与していることを明確に示している。さらに、紫外レーザーによる脱離では、金ではなく、白金は金属酸化物が効率のよい脱離とイオン化を見せていることから、単純に熱のみによるものではないことが分かる。メカニズムの明快な説明はまだできてはいないが、光による電子移動が関与している可能性がより高まったことで、SALDI-MSにおいて、それぞれの波長に応じた脱離・イオン化の機能性の高いナノ粒子を合成し、用いることの可能性と意義が高まったと言える。
|