2011 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外光励起ピコ秒時間分解ラマン分光法による機能性分子・高分子・生体分子の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018004
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
坂本 章 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90262146)
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Keywords | ピコ秒時間分解ラマン分光法 / 近赤外ラマン励起 / 共役高分子 / 機能性分子 / 生体分子 / 電子励起状態 |
Research Abstract |
本研究では,波長可変でパルス幅が約2ピコ秒の近赤外光パルスをラマン励起光源としたピコ秒時間分解ラマン分光システムを拡張・改良し,これを機能性分子・高分子・生体分子の電子励起状態へ応用する.平成23年度に行った主な研究課題は,次の3項目である. 1.蛍光性分子及び分子複合体のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 極性溶媒中で分子内電荷移動状態を生成する分子(ビアントリルなど)では,電荷移動に伴う過渡吸収が近赤外領域に現れる.改良したシステム(1064nm励起)を用いて,9,9'-ビアントリル(BA)の光励起状態の近赤外光励起ピコ秒過渡ラマンスペクトルの測定を行い,BAの局所励起(LE)状態のモデルと考えられる9-メチルアントラセン(9MA)のS_1状態の過渡ラマンスペクトルと比較した.両者はよく一致し,観測したBAの過渡ラマンマンスペクトルは,LE状態に帰属されると考えている. 2.導電性高分子のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 ポリ(P-フェニレンビニレン)などの導電性高分子では,光励起状態のピコ秒過渡吸収は近赤外領域に現れる改良したシステム(1064nm励起)を用いて,その共鳴ラマンスペクトルを測定し,局在励起状態の分子構造や,光電荷分離ダイナミックスを明らかにしている. 3.フラーレンとフラーレンナノ粒子のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 フラーレン分子とナノ粒子の両方のS_1状態とT_1状態の共鳴ラマンスペクトルを,それぞれ1064nm励起と775nm励起のピコ秒時間分解ラマン分光システムを用いて測定している.結果を解析することで,異なる電子状態と異なる凝集状態におけるフラーレンの分子構造とダイナミクスを解明できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」に記載した具体的な研究課題は5項目である.2年の研究期間(平成22年度~平成23年度)が終了した現時点で,すべての項目を実施し,3項目については研究成果を得た.残りの2項についても,予備的なデータを得ており,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,本研究で製作・改良した近赤外光励起ピコ秒時間分解ラマン分光システムを用いて,以下の2項目の研究課題について継続して取り組む予定である. 1.導電性高分子のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 2.フラーレンとフラーレンナノ粒子のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析
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Research Products
(15 results)