2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子―水錯体の構造と光反応性
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018005
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤井 伸行 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (50452008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 一彦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30126320)
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Keywords | 生体分子-水錯体 / 光反応機構 / マトリックス単離赤外分光法 / DNA塩基・シトシン / アミノ酸 / 互変異性化・回転異性化 |
Research Abstract |
単分子の光反応過程は詳細に解明されつつあるが、溶媒和や温度など外部の影響による反応機構は不明な部分が多い。特に生体内反応では水分子を恒常性の維持など高度に組織化された生体機構に取り込んでいるため、生体分子だけの反応解析だけでは十分に生体反応を理解・模倣することができない。本研究では、生体分子が水と錯体を形成することではじめて開ける反応経路を見出し、その反応機構を明らかにすることを目的としている。本年度は昨年から引き続いてヒドロキノン-水錯体の反応機構を明らかにした。特に水2分子がヒドロキノンに電子供与的に水素結合した場合に限って、ヒドロキノンの光酸化反応が進行することを明らかにした。また、DNA塩基の一つであるシトシンの光反応を研究した。シトシンには複数の互変異生体があるが、そのうちイミノ体と呼ばれる互変異生体の明確な分光情報は得られていなかった。そこで、マトリックス単離したシトシンの光反応を詳細に研究することで、エネルギー的に安定なアミノ体からイミノ体への光誘起互変異性化反応を初めて検出することに成功した。シトシン互変異生体は複数の電子励起状態がエネルギー的に近接していることから、外部環境を変化させることで任意の互変異生体のみ生成することができる可能性がある。そこで、現在は水錯体を形成させることや、外部誘電場、温度などを変化させることで、シトシンの光反応機構がどのように変化するか研究している。また、難揮発性アミノ酸のマトリックス単離分光を行っており、光反応させることで、異性体の分離にまで成功している。
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