2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子―水錯体の構造と光反応性
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018005
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤井 伸行 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (50452008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 一彦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30126320)
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Keywords | マトリックス単離法 / 赤外分光法 / 可視吸収スペクトル / 錯体反応 / 量子化学計算 |
Research Abstract |
これまでの研究を発展させ,本研究は生体分子が水分子と錯体を形成することではじめて光反応が進行する系を見出し,その反応を解析することを目的とした。本特定領域研究前半期に見出していたヒドロキノン-水錯体からベンゾキノンへの光酸化反応機構をマトリックス単離赤外分光法と時間依存密度汎関数理論計算によって明らかにした。その機構は水分子が電子供与体としてヒドロキノンの水酸基に水素結合することで,ヒドロキノン単体では存在しない低エネルギーの電子励起状態が生成し,その電子励起状態への遷移が水素引き抜き酸化反応を誘発した。この反応系の発見および反応機構の解明は生体分子と水分子との錯体の重要性を再評価するものであった。これを踏まえ,さらに多くの生体分子(DNA塩基,アミノ酸,ペプチドなど)と水錯体の研究を行ったが,生体分子単体と水錯体で明確な光反応性の違いを見出すことができないか,あるいは測定したスペクトルが複雑すぎて期間内での解析が不可能であった。そこで,本年度途中から,大気微量分子の錯体を形成した時にはじめて生じる光反応に着目し研究を進めた。その結果,環境化学で注目される硫酸エアロゾルの起源とされるジメチル硫黄(DNS)とオゾン分子の錯体において,これまで想定していなかった低エネルギー光誘起酸化反応機構の存在を明らかにした。オゾン分子単体では可視光領域での光吸収はほぼ禁制のため観測することができない。DMSも可視光領域には吸収帯を持たないが,両者を混合し錯形成させることで400nm付近と610nm付近に強い吸収帯が生じることを見出した。さらに長波長側の裾を光励起(λ≒700nm)したところ,DMSとオゾン錯体からDMSOと酸素分子が生成することを見出した。理論計算を併用した解析の結果,オゾン分子には600nm付近に非常に弱い吸収遷移があり,DMSと錯体を形成することでその吸収が数100倍程度増強されたことが予想された。このオゾン吸収帯の錯形成による増強効果は他の大気微量分子でも起きうると考えられ,未だ不明な大気中での物質収支解明に貢献できる可能性がある。
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[Presentation] 一重項酸素の生成と緩和2011
Author(s)
秀森丈寛, 井田明, 赤井伸行, 河合明雄, 渋谷一彦
Organizer
2011年光化学討論会
Place of Presentation
宮崎市河畔コンベンションエリア(宮崎)
Year and Date
20110906-20110908
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