2010 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解分光法によるミクロからマクロにおよぶタンパク質の反応ダイナミクスの理解
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018012
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 圭一 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90467001)
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Keywords | 時間分解分光 / タンパク質 / 反応ダイナミクス / ミクロ / マクロ |
Research Abstract |
研究初年度となる平成22年度はマクロな構造変化を時間分解分光を使って調べるため、研究実施計画に示した、光電子増管を使った単一プローブ波長での過渡吸収測定系の構築を行った。装置は当初の計画通り10ナノ秒以下の時間分解能を有し、10^<-4>程度の検出感度を持つシステムの構築に成功し、ロドプシンの吸収変化の信号を良いS/N比で捉えることに成功した。そしてそのシステムと過渡回折格子法測定系を使い、本領域AO3班の須藤グループとの共同研究としてSalinibacter Sensory Rhodopsin I(SrSRI)の反応ダイナミクスの研究を行った。その結果SrSRIには吸収スペクトルが同一で、マクロな構造(部分モル体積)が異なる中間体が3つ存在することが明らかになった。またそれらを含めたSrSRIの各中間体のエンタルピーは塩化物イオンの結合に伴い変化することが明らかになり、分子全体の構造エネルギーが小さなイオンの結合によって大きく左右されることを発見した。これらの結果は平成22年12月に米国・ホノルルで行われた国際会Pacifichemで成果を発表し、また物理化学において重要な雑誌であるJ.Phys.Chem.B誌に論文として発表した。またインド・Annamalai大学で行われたICORFAS-2010では、これらの結果について招待講演を行った。今後残り一年の研究期間内に、研究目的であるよりミクロな領域の構造変化を調べるため、全反射赤外分光法や時間分解赤外分光法を用いた研究をすでに行っている。そしてそれ以外にもProteorhodopsinやGloeobacter rhodopsinなど他のロドプシンについてもその反応ダイナミクスを調べ、ロドプシンごとの分子的な性質を比較することで、より網羅的な研究を行っていく予定である。
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