2010 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解蛍光・中性子散乱法を用いたナノディスクの構造転移と脂質ダイナミクスの研究
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 実 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70314226)
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Keywords | 中性子散乱 / 蛍光寿命 / ナノディスク / ベクシル |
Research Abstract |
脂質ナノディスクはリン脂質とアポリポタンパク質A-I(apoA-I)との複合体であり、生体内で見られる新生HDLと同じ構造をもつ。近年では薬物のキャリアとしての利用や膜タンパク質再構成のツールなど、応用面での関心が高まっている。本研究では、このナノディスクの微細構造や動的特性についての評価を行った。 Palmitoyloleoylphosphatidylcholine(POPC)とapoA-Iの混合物のコール酸透析によって生成したナノディスクとベシクルの生成量比、及びその温度依存性から、ナノディスク生成のGibbs自由エネルギー、エンタルピー、エントロピーを算出した。その結果、ナノディスクはベシクル/apoA-I混合物よりも熱力学的に安定(ΔG°=-52kJ/disc mol at 37.0℃)であること、その生成はエンタルピー駆動(ΔH°=-620kJ/disc mol、ΔS°=-570kJ/disc mol)であること、また、大きなエンタルピー減少のうち68%は、apoA-Iのα-ヘリックス形成が寄与していることを明らかにした。 Dimyristoylphosphatidylcholine(DMPC)を構成脂質とするナノディスクについて中性子小角散乱及び蛍光法によって構造評価を行ったところ、ナノディスク中のDMPCはベシクル中に比べ、密に充填されていることが明らかになった。脂質のナノディスク間移動速度を時分割中性子散乱によって評価したところ、ベシクル間移動よりも約20倍も促進されており、しかもエントロピーの増加を伴うことが判明した。すなわち、脂質の高密度の充填が、膜のエントロピーの低下をもたらし、脂質の膜解離プロセスを有利にすることが明らかとなった。
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