Research Abstract |
これまで我々は、温度効果だけでなく水素原子核の量子揺らぎを考慮した多成分系分子理論を開発し、常温においても核の量子効果が重要であることを見出し[1-3]、低障壁水素結合系における特徴的なNMRスペクトルの存在を理論的に予測してきた[4]。本年度は主に以下を実施した。 (1)高次系への拡張:経路積分ハイブリッドモンテカルロ法の展開: 経路積分計算においては、一般的に分配関数の2次展開が用いられるが、ビーズ数の収束性が遅いことが知られている。4次展開により収束性を速めることは可能だが、計算時間に負荷がかかる[1]。そこでハイブリッドモンテカルロ法を適用することで、精度を保ったまま計算時間を抑えることに成功した[2]。 (2)イオン水和クラスターの計算:(3)生体小分子:ポルフィセンの二重プロトン移動機構の解析: ポルフィセンニ重プロトン移動には、二つの反応経路が提唱されている。一方は最安定であるtrans構造から二次の遷移状態(TS)構造を経てtransに至る協奏的過程である。もう一方はtransから一次のTSを経て準安定なcis構造になり、再び一次のTSを経てtransに至る段階的過程である。経路積分法を適用したところ、協奏的過程が支配的であるが、高温になると段階的過程もわずかに見出された[3]。 [1]K.Suzuki,M.Shiga,and M.Tachikawa,J.Chem.Phys.,129,144310(8pages)(2008).[2]K.Suzuki,M.Tachikawa,and M.Shiga,J.Chem.Phys.,132,144108(7pages)(2010).[3]T.Yoshikawa,S.Sugawara,T.Takayanagi,M.Shiga,and M.Tachikawa,Chem.Phys.Lett.,496,14-19(2010).[4]Y.Kita and M.Tachikawa,Chem.Lett.,38,1156(2Dages)(2009).
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