2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子・熱ゆらぎを考慮した生体分子高次系クラスターの理論的解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
22018024
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
立川 仁典 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (00267410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北 幸海 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (40453047)
志賀 基之 日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究員 (40370407)
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Keywords | 水和機構 / 化学物理 / クラスター / 経路積分 / 生体分子 |
Research Abstract |
これまで我々は、温度効果だけでなく水素原子核の量子揺らぎを考慮した多成分系分子理論を開発し、常温においても核の量子効果が重要であることを見出し、低障壁水素結合系における特徴的なNMRスペクトルの存在を理論的に予測してきた。本年度は主に以下を実施した。 (1)高次系への拡張:計算コストを抑えるために、マルチリゾリューション法に基づくポテンシャル曲面や、半経験的分子軌道法を適用した[1]。 (2)イオン水和クラスターの計算:Ag+(H2O)n(n=1-4)およびCu+(H20)の構造と振動スペクトルをより精密に算出するために、ab initio分子動力学(MD)法、ab initio経路積分分子動力学(PIMD)法[2]、ab initioリングポリマー分子動力学(RPMD)法を応用した。MD法およびRPMD法により得られた振動スペクトルは非調和性を考慮することができる。そのため、特にRPMD法で得られた振動スペクトルは、スケール因子を用いることなく実験値とよい一致を示した。 (3)生体小分子:ポルフィセンの二重プロトン移動機構の解析:photoactive yellow protein(PYP)の発光素(CRO)近傍における低障壁水素結合部位に、電子と原子核の量子性を考慮可能な多成分系密度汎関数理論を適用した。その結果、CROと隣接酸素原子間の距離が実験値とよい一致を示し、また重水素置換によって酸素原子間距離が伸張することを見出した。 [1]S.Sugawara, T.Yoshikawa, T.Takayanagi, and M.Tachikawa, Chem. Phys. Lett., 501, 238-244(2011). [2]A.Koizumi, K.Suzuki, M.Shiga, and M.Tachikawa, J. Chem. Phys.(Communication), 134, 031101(3pages) (2011).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
電子状態(立川)と統計化学(志賀)だけでなく、新たに化学動力学(高柳)、分子力場(北)、さらにはポテンシャル曲面作成(八木)という多方面からの理論化学的アプローチを取入れ、有機的な共同研究を実施することで、当初計画以上の成果を得ることができた。さらには、関谷グループ(九大)や片岡グループ(奈良先端大)といった実験グループとの議論を通し、本領域内での共同研究も実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
量子・熱ゆらぎを考慮した生体分子高次系クラスターを理論的に解明するためには、例えば溶媒を充分に含めた大規模計算等が必要である。本研究で構築した共同研究体制を積極的に発展させていくことで、さらなる生体分子高次系クラスターの理論解析を発展させていきたい。
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Research Products
(34 results)