2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞老化の不可逆性を規定する分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cell Proliferation Control |
Project/Area Number |
22019043
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
原 英二 (財)癌研究会, 癌研究所がん生物部, 部長 (80263268)
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / ゲノム / シグナル伝達 / 発現制御 |
Research Abstract |
多細胞生物においては、単に、その構成細胞の分裂増殖を促進するだけでなく、発生段階、または状況に御応じて構成細胞の増殖を安定的に停止させることが生命維持にとって必須事項となっている。この安定的な増殖停止の1つとして、細胞老化が知られている。細胞老化は細胞周期の休止期(GO期)に見られるような一時的な増殖停止状態とは異なり、もはやいかなる増殖刺激を与えても細胞分裂を再開できない不可逆的な増殖停止状態である。細胞老化は、古くから癌抑制機構として機能していると考えられてきた。しかし、細胞老化を起こしても、細胞が死滅するわけではないので、老化細胞が生体内に長期間生存し続けることが予想される。このため、この増殖停止の不可逆性が細胞老化が癌抑制機構として働くための必須条件になっていると考えられる。我々はこれまでCDKインヒビターであるp16^<INK4a>が活性酸素種(ROS)を介して細胞老化の不可逆性を誘導していることを見出してきた。更に最近、ROSがDNA methyltransferase 1(DNMT1)の分解を促進する可能性を見出した。これらの研究成果を踏まえ、本研究では細胞老化で起こるエピジェネティックな遺伝子発現変化の分子機構とその役割を解明することで細胞老化の不可逆性とその生物学的意義を解明することを目的として研究を行い以下の研究結果を得た。1. 細胞老化の誘導にはDNAダメージ応答経路が活性化されることによりDNMT1のユビキチン化が促進され、DMT1がプロテアソーム依存的に蛋白質分解を起こすことが必要である。2. 老化細胞ではDNMTIの分解によりDNA及びヒストンのメチル化状態の両方が変化し、細胞周期の進行を阻害する様々な遺伝子の発現が安定的に上昇していることが細胞老化の不可逆を規定している可能性を見出した。
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Research Products
(4 results)