2010 Fiscal Year Annual Research Report
NotchシグナルによるTリンパ球恒常性維持機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Immunological Self Recognition and its Disorders |
Project/Area Number |
22021031
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
前川 洋一 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10294670)
|
Keywords | Notch / Tリンパ球 / 細胞プール / 生存 / 細胞の寿命 |
Research Abstract |
Tリンパ球を始めとする多くの細胞は個体の生涯を通して一定の細胞数に制御されている。この制御からの逸脱、すなわち増加は自己免疫疾患やがん化、減少は免疫不全へと帰結する。各々の細胞数(プール)が厳密に制御されることが免疫システムの恒常性維持に必須であるが、詳細な分子機構は明らかになっていない。本申請研究では、Tリンパ球の恒常性維持機構を分子レベルで解明することを目的とする。 私たちは従来、Tリンパ球におけるNotchシグナルの役割について研究を行っている。その中で、Notchシグナルが生体内でのTリンパ球の長期生存に関与しているのではないかとの知見を得ていた。そこで本研究ではこの知見を基盤としてTリンパ球の生存について詳細な検討を加えた。生体内でのTリシパ球の生存を抗原未感作のナイーブ状態と抗原刺激を受けたメモリー状態の2つに分けて検討した。ナイーブTリンパ球とメモリーTリンパ球のプールは各々独立してそのサイズが維持されていることがわかっている。Notchシグナルを欠損するTリンパ球はメモリー細胞およびナイーブ細胞のいずれの状態でも対照群である野生型Tリンパ球と比較してその生存が短縮していた。メモリー細胞は獲得免疫応答の基本的かつ重要な特徴の一つであることから、私たちはメモリーTリンパ球の生存におけるNotchシグナルの役割についてさらに検討を行った。Notchシグナル欠損によるメモリーTリンパ球維持機構の破綻はTリンパ球生存シグナルであるStat5シグナル系を過剰に補った場合でも完全に回復しなかった。また、メモリーTリンパ球維持を支持するRapamycin投与によってもNotchシグナル欠損メモリーTリンパ球の寿命短縮は改善しなかった。 以上から、Notchシグナルは従来の知見とは異なる機構によってメモリーTリンパ球プールを維持していることが示唆された。
|