2011 Fiscal Year Annual Research Report
胚中心におけるB細胞の自己識別および寛容誘導の分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Immunological Self Recognition and its Disorders |
Project/Area Number |
22021042
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
北村 大介 東京理科大学, 生命科学研究所, 教授 (70204914)
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Keywords | 免疫学 / 胚中心 / 自己寛容 / T細胞依存性免疫応答 / Bリンパ球 / 自己免疫病 / 記憶B細胞 / 体細胞突然変異 |
Research Abstract |
胚中心において体細胞突然変異により出現し得る自己反応性B細胞がどうして寛容に陥るのか、言い換えれば、胚中心B細胞が外来抗原と自己抗原とをいかに識別するのかは不明である。私たちは誘導性胚中心B(iGB)細胞培養系、すなわち、CD40L・BAFFを発現するフィーダー細胞(40LB)の上でIL-4およびIL-21を順次用いて、ナイーブB細胞を著しく増殖させる培養法を確立した。この系では、B細胞はIgG1かIgEへとスイッチし、胚中心B細胞の表現型を示し、vivoでは記憶B細胞か長期生存形質細胞へと分化する。この培養系を用いて、まず、抗原特異的B細胞選択系を作成した。すなわち、抗原特異的な抗原受容体遺伝子導入マウスのB細胞を、大過剰の通常のB細胞と混ぜ、その抗原を表面に提示させた40LB細胞上で培養し(前刺激)、次に、Fasリガンドを発現させた40LB上で培養すると、抗原特異的B細胞だけが生き残り、それ以外のB細胞はアポトーシスに陥った。この抗原受容体シグナルによるFas誘導性細胞死の抑制は胚中心における抗原特異的B細胞の選択を表すと考えた。しかしこれでは自己反応性B細胞も選択されてしまう。本来、抗原受容体は結合する抗原が自己か非自己かを識別できないこと、胚中心B細胞上にはFcγRIIBが発現し、そこにはすでに産生された免疫抗原特異的IgG抗体が結合し得ることなどから、1つのB細胞上の抗原受容体とFcγRIIB結合抗体とが異なる抗原を認識した場合、そのB細胞は自己抗原を認識したと規定されるとする仮説をたてた。そこで、抗原を提示する40LBとFcγRIIBを架橋するための40LBが混在する前培養にして抗原特異的B細胞選択系を行ったところ、生存する抗原特異的B細胞の割合は強く抑制された。すなわち、抗原受容体とFcγRIIBとが独立に架橋されるとB細胞はFas耐性とならないことを示している。以上より、胚中心B細胞による自己・非自己の識別は、抗原受容体シグナルとFcγRIIBシグナルの相対的関係によって規定されると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
誘導性胚中心B細胞培養系に基づく抗原特異的B細胞選択系を用いて、抗原に結合するIgG抗体が自己・非自己識別のための標識となるというアイデアをin vitroで証明できたが、その結果をマウス個体で確認するには至らなかった。また、選択された胚中心B細胞に記憶B細胞への分化能を賦与する遺伝子を探索する試みについては、いくつかの候補遺伝子を同定したが、その決定には至っていない。さらに、ヒト末梢血B細胞を用いた誘導性胚中心B細胞培養系を構築することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
B細胞上の抗原受容体とFcγRIIB結合抗体とが異なる抗原を認識した場合、そのB細胞は目己抗涼を認識したことになり、Fas感受性となって死滅するというという説をin vivoで確かめるため、IgG抗体を産生しない変異マウスにT細胞依存性抗原を免疫し、自己特異的B細胞クローンが胚中心に出現するかどうか調べる。また、記憶B細胞への分化誘導因子の同定については、誘導性胚中心B細胞に候補遺伝子を導入し、これをマウスに移入して、記憶B細胞の形成が促進されるかどうかを見るという方法で進める。さらに、現在、ヒト末梢血B細胞を用いた抗原特異的B細胞選択系の構築を進めている。
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Research Products
(5 results)