Research Abstract |
申請者は,これまで実時間で有限要素解析によって内部組織の変形を推定するシステムneuroFEMの研究を進めきた.この研究では,1つの鉗子で肝臓表面を扱うことを前提として,その操作によって起こり得る変形を1つのニューラルネットワークで推定する.肝臓は塊と大まかに捉えるとすると,胃は階層状に並ぶ薄膜の集合体であるため,胃全体の大局的動きと手技による局所変形の両方を再現する必要がある.また,切開や切除により,その操作前後の胃の構造,つまり組織モデルの構造が変わる.このような問題を解決するために,平成22年度では,これまで構築してきた手法を基盤として,胃ESDの手技で生じる組織変形を実時間有限要素解析によって再現するシステムを構築することを目的とし,以下の研究項目に沿って研究を行った. まず,切開切除手技に対応した構造を持つ,胃の有限要素用メッシュモデルを構築した.次に,neuroFEHの構築では,多数の初期条件一変形モードの組を学習データとして用い,「初期条件に対する組織モデルの変形」という非線形関係をニューラルネットワークに学習させる.しかし,胃のような管腔臓器は形状や体積が変化するため,変形の多様性が高い.その結果,上述の非線形問題が更に複雑になり,1つのニューラルネットワークで学習できない可能性がある.そこで,胃の周囲にある組織との解剖学的関係を考慮して,胃の変形パターンを5つのグループに分類する手法を開発した.これにより,学習問題をサブ学習問題に分割し,各サブ学習問題を1つのネットットワークで学習することで,システムの推定精度向上と,処理の並列化による学習速度の改善が期待される.また,学習時間の更なる短縮化のため,各グループ内にあるパターン間の類似度を定義し,この類似度に基づいて冗長なパターン数を削除する方法を構築した.
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