Research Abstract |
研究の初年度の平成22年度においては,医用データベースの整備,肝臓統計形状モデルの作成及び統計形状モデルによる肝硬変診断支援の可能性について研究を行ってきた.主に以下の研究成果が得られた. 【成果1:肝硬変を含む肝臓の時系列データベース】 本研究の主な目的は,肝臓疾患による肝臓の経時変化を追跡し,その変化を定量的に評価することにより,診断・治療する指針を与えることである.そのために,肝臓の時系列データ(一定の期間をおいて撮影されたボリュームデータ)のデータベース(学習データベース)の構築が重要である.このようなデータは今まであまり報告されていないので,本研究では,肝硬変を含む慢性肝疾患患者を中心に,2006年から毎年撮影された腹部CT画像を整備し,データベースを構築している.連携研究者(古川,金崎)の協力によりこれまですでに7名の患者データが収集・整備された. 【成果2:肝臓の統計形状モデルの作成と肝硬変診断支援への応用】 正常データ(9症例)と肝硬変データ(9症例)を用いて肝臓の統計モデルを構築した.第1主成分は主に肝臓右葉の形状バリエーションを,第2主成分は主に肝臓右葉の形状バリエーションをそれぞれ表していることがわかった.また,第1成分と第2成分の係数分布図において,正常データは原点(平均形状)近くに位置し,肝硬変データは周辺外側に散乱していることがわかった.多くの肝硬変データは第1成分と第2成分においていずれも大きな係数をもっている.すなわち,肝硬変データは右葉が小さく,左葉が大きくなる傾向がある.この観察は実際の臨床観察結果と一致している.統計形状モデルが肝硬変による形態変化を捉えることができる.さらに,時系列データを用いた場合,いずれも肝硬変の進行に従い,データは外側(平均形状からずれる方向)にシフトしていくことがわかった.今後定量評価が必要である.
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