2010 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖ポリエーテル基により包み囲まれた遷移金属触媒中心による反応集積化
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
22106517
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 康之 京都大学, 工学研究科, 教授 (30144330)
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Keywords | パラジウム触媒 / エチレングリコール / ホスフィン配位子 / 鈴木-宮浦カップリング / 塩化アリール / ONIOM計算 |
Research Abstract |
配位子に導入したエチレングリコール鎖の鎖長の影響を調べるため、4-クロロトルエンとフェニルボロン酸を基質とした鈴木-宮浦カップリング反応を検討した。反応は配位子の影響を強く受け,最も長い鎖を有するPEG750を配位子とした際には高収率で反応が進行した。一方、鎖のより短いPEG550では中程度(63%)の収率に低下した。さらにより鎖長が短いTEGでは22%という低収率に留まり、エチレングリコール鎖をもたないMeOを用いるとほとんど反応は進行しなかった。また、エチレングリコール鎖を持たない配位子にPEG750と同程度の長さの鎖を有する化合物PEG750DMEを添加剤として加えても反応は全く進行しなかった。これらの結果から、高い活性を発現するためには長鎖が必要であること、さらにこの長鎖エチレングリコールが配位子に固定されている必要があることが分かった。本研究で用いた鎖長の異なる配位子(TEG,PEG550,PEG750)間で大きな活性の差が生じた理由についてより詳細に考察するため、これらの配位子について,ONIOM計算による構造の最適化を行った。その結果,これらの配位子においては,エチレングリコール鎖がパラジウム中心を覆うような構造が安定であることがわかった。さらに用いたPEG鎖により覆われた体積が大きく異なっていた。実際にこれらの最適化構造についてConnolly溶媒除外体積を求めたところ、それぞれ1771 Å^3(TEG), 4289 Å^3(PEG550), 5903Å^3(PEG750)であった。 反応においては,触媒中心を長鎖エーテル基で包み覆うことにより,極めて特異な触媒環境を構築することに成功した。このような触媒においては配位子が一つだけ配位した極めて配位的に不飽和な触媒環境を発生させることができ,極めて高い触媒活性が実現したものと考えられる。
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Research Products
(4 results)