Research Abstract |
ペンタセン,トリフェニレン,コロネン等のグラフェンの部分構造を有する多環式芳香族化合物(グラフェン類縁体)は,優れた電子移動特性や光学的特性を示す事から,様々な誘導体合成と機能性秘料としての用途展開が行われている.一方,π電子系にヘテロ元素を有するヘテログラフェン類縁体は,ヘテロ元素の特性に由来する新たな機能発現が期待されるが,その合成は容易ではなく,多くは理論化学的研究に留まっている.そこで申請者は,これまでに開発した鉄族金属フッ化物触媒によるビアリールカップリング反応と連続的ヘテロFriedel-Crafts反応を,多重反応および逐次反応として集積化することで,ヘテログラフェン類縁体の実践的合成法の確立を目指す,今年度は,タンデムボラFriede1-Crafts反応が進行することを見出し,種々のBN縮環拡張π共役化合物の集積合成法を確立した.合成した化合物の中で,ジベンゾアザボラクリセンに関し,TRMC(Time-Resolved Microwave Conductivity)測定を行ったところ,0.07cm2V-1s-1という比較的高い電荷移動度を示すことが明らかとなった,興味深いことに,対応する炭素類縁体である,ジベンゾクリセンは,結晶状態でジベンゾアザボラクリセンとほぼ同一の分子構造,積層形状をとっているにも関わらず,10分の1程度の電荷移動度(0.007cm2V-1s-1)を示した.この原因を探るべく,X線結晶構造に基づく電荷カップリング計算を行ったところ,ジベンゾアザボラクリセンは,ジベンゾクリセンに比べてa軸方向への電荷カップリングが10倍程度大きくなっていることが示唆された.これは,BN部位の摂動によりHOMOおよびLUMOが局在化することで,分子間軌道相互作用が強まったことがその要因と考えられる.一連のBN縮環拡張π共役化合物は、電荷輸送特性に加えて発光特性も示すことから,現在,有機エレクトロニクスにおける新材料としての応用研究を進めている.また,これらの化合物は,ナノヘテログラフェンのボトムアップ合成の出発物質としても期待できる.
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