2010 Fiscal Year Annual Research Report
物質科学に基づいたフラクタル多孔媒質系の摩擦法則に関する計算的研究
Publicly Offered Research
Project Area | New perspective of great subduction-zone earthquakes from the super deep drilling |
Project/Area Number |
22107504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
波多野 恭弘 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20360414)
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Keywords | 断層ガウジ / 摩擦 / フラクタル / 摩耗 / 離散要素シミュレーション |
Research Abstract |
本研究課題の目的はフラクタル多孔媒質の摩擦法則の解明である。とくにすべりの安定性の決定に重要な役割を果たす、定常状態摩擦係数の速度依存性を解明することを目指している。粒子一つ一つをモデル化した離散要素シミュレーションと理論によるアプローチで、摩擦係数が断層を特徴づける様々な条件によって変化する仕掛けをその物理的原因まで含めて明らかにする。 H22においては、これまで断層摩擦特性に影響を及ぼすと考えられてきた粒径分布のダイナミクスを理論的に理解するため、脆性摩擦における摩耗の理論モデルを作成した。具体的には、摩耗過程に対するある仮定のもと、粒径分布関数の時間発展を記述する微積分方程式を書き下し、その方程式が定常解として指数-2.5のベキ分布を持つこと、またこの定常解が粒子の破壊条件の詳細によらないことを示した。非定常状態については計算機によって数値解を求め、初期条件に依らず上記の定常解へ漸近して行くことを確かめた。 次に、粒径分布が摩擦係数へ及ぼす影響を研究した。粒径分布関数として様々なベキ関数を用意し、それぞれの系について離散要素法シミュレーションによって摩擦係数を計算した。その結果、摩擦係数は粒径分布関数の指数にはほとんど依存しないことが分かった。このことは摩耗過程によって摩擦係数は変化しないことを意味する。フラクタル性が摩擦に対して特別な役割を果たさないことは不思議であるが、その物理的原因については次年度の研究に持ち越された。
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