2011 Fiscal Year Annual Research Report
典型元素間配位結合を利用した生体化学プログラミング
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
22108508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 直和 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (00302810)
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Keywords | 蛍光 / アゾベンゼン / ホウ素 / 窒素 / リン |
Research Abstract |
優れた特性を持つ機能性化合物の開発に向けたイノベーションの実現という研究の目的のために、典型元素化学と生物有機化学という異なる研究分野で別々に扱われてきた、従来は接点のなかった機能性物質を複合的に組み合わせた研究を行った。初めに、イオン性官能基の導入によって水溶性を向上させた蛍光性アゾベンゼンの生体蛍光染色色素としての有用性を調べた。その結果、細胞への注入初期段階においては翻訳が必要なmGFPよりも強く発光し、十分に翻訳が進行した段階ではmGFPの方が強い発光を示すことが明らかとなった。すなわち、ある段階については生体蛍光染色色素として次に、これまでに開発した典型元素の特性を活用した蛍光性アゾベンゼンにペプチドを導入し、生体内組織の蛍光ラベル化剤を開発することを目指した。蛍光性アゾベンゼンの4'位のヒドロキシ基を塩基で引き抜いた上で、フェニルアラニンの保護体を導入した。その後の切り出し反応を試みたところ、複数の成分が得られ、反応がきれいに進行しなかった。また、イオン性官能基を持たない場合には水溶性が低く、その後の生体内物質とのハイブリッド化による応用が困難であった。そこで、多様な元素特性を活用するべく、アゾ基の二つの内の窒素の一方を同族の高周期元素であるリンに置き換えた非対称な化合物の合成に着手した。その結果、窒素の近傍に典型元素を配置することで、分子内原子間相互作用が発現することを明らかにした。また、元素の種類によって強固な分子内原子間相互作用が形成された。通常条件では蛍光発光が観察できなかったものの、酸の添加によって弱いながらも蛍光発光が観測されることを見出すことができた。このように典型元素を活用した新たな蛍光発光材料として期待できる結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、強い蛍光を発するアゾベンゼンと生体内物質とを組み合わせることを目指していたが、生体蛍光染色色素としての使用可能性を見出すことはできたものの、DNAチューブなどのナノ構造体の構築までには至っていないため。
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