2010 Fiscal Year Annual Research Report
両親媒性含遷移金属ロタキサンを用いる分散系の制御-温度可逆ゾルゲル相転移
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
22108509
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小坂田 耕太郎 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (00152455)
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Keywords | バラジウム / ゲル / ミセル / 相転移 |
Research Abstract |
本研究では、アルキルピリジニウム配位子を有するパラジウム錯体を軸成分、α-シクロデキストリンを環成分としてロタキサンを新たに開発し、その水溶液からゲルへの相転移を検討する。特に、本年度は、各成分分子及びロタキサンの合成に重点を置いて研究をおこなった。汎用性有機化合物として知られる各種のアルキルピリジニウムおよびアルキルビピリジニウムを合成し、そのα-シクロデキストリンとのロタキサン形成を各種スペクトル解析を中心に研究した。アルキル基の長さに応じてα-シクロデキストリンを1個-3個まで含む2~4擬ロタキサンを得ることができた。擬ロタキサン水溶液のROESYパルステクニックを用いたNMR測定を行ったところ、これらの擬ロタキサンは、その軸成分の末端同士がスタッキングにより相互作用したオリゴマーを形成していることがわかった。この溶液の温度を下げると、成分分子化合物濃度および溶液温度に応じてヒドロゲルが生成する。このゾルゲル相転移温度は溶液調整条件を変えることによって、7℃から63℃まで自在に変化することができた。ゲル生成のための条件を溶液スペクトルから検討した。その結果、溶液内に2-ロタキサンのみが存在する場合にはゲルは生成することなく、少量でも3-ロタキサンが生成するとゲル化することがわかった。すなわち、これらロタキサンは溶液内では軸分子の相互作用によってオリゴマーを形成しているが、環状分子が2個並列した3-ロタキサン構造が一部に生じるとオリゴマー間に親水的な相互作用が生じ、これによって三次元ネットワークが構築されること、ネットワーク間に溶媒分子が包接されて、ヒドロゲルが生成すること、がわかった。 本研究計画によって、溶液のゲル化とゾル化を、錯体化学的に厳密に制御できる配位結合と関連付けることが可能になったとともに、これまで困難であったゲル化の精密な制御を達成できた。
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