2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算による多核金属錯体の物性発現機構の解明と分子素子設計への展開
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
22108515
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北河 康隆 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60362612)
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Keywords | 量子化学 / 第一原理計算 / 磁性 / 多核遷移金属錯体 / スピン射影(AP)エネルギー微分法 / 光物性 / 電気伝導性 / 電子状態理論 |
Research Abstract |
本年度は、(1)多核錯体の磁性パラメータ(J)値の第一原理計算、(2)一次元多核錯体の電気伝導度計算、(3)π共役配位子を有する多核錯体の光吸収スペクトルの第一原理計算、(4)巨大ビラジカル分子の構造最適化のための二階層QM/QM法の開発、を行った。まず(1)の、J値の定量的計算に関しては、大塩グループによって合成されたFe_2Co_24核錯体に関して、金属イオン間に働くJ値を量子化学計算により求めた。本研究は大塩グループとの共同研究にて遂行された。続いて(2)では、PengらによるNi一次元錯体に着目し、電気伝導計算を行った。計算結果は実験と良く一致し、また、伝導性に寄与する軌道を明らかにする事に成功した。これらの結果は招待講演などで発表した。(3)では(1)で計算したFe_2Co_24核錯体の光吸収による電荷移動(IVCT)のメカニズムを時間依存密度汎関数(TD-DFT)計算により検討した。励起スペクトルを計算し、遷移に関与する分子軌道の解析を行った結果、電荷移動に関与する軌道を明らかにする事に成功した。加えて、棚瀬グループにより合成されたPd8核錯体における電子状態および光吸収スペクトルをDFTおよびTD-DFT計算により解析した。本錯体は、σ軌道が分子内に大きく非局在している事から、ナノワイヤの有力な候補となることが考えられる。また、光吸収にともなう遷移に関与する軌道を明らかにした。本研究は棚瀬グループとの共同研究である。最後に(4)では、巨大配位子を有する二核錯体などの、巨大ビラジカル分子の構造最適化を精度よく行うために、本研究グループで開発したAP法とスピン制限法をONIOM法に基づいて融合するAP/R法を提案した。得られた結果は、全体をAP法で最適化した座標とほぼ一致しながら、計算機コストを大幅に削減させる事に成功した。
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