2010 Fiscal Year Annual Research Report
配位プログラミングを利用した円偏光発光セキュリテリー分子システムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
22108522
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (40221197)
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Keywords | セキュリティー / 配位プログラミング / 希土類 / 分子集合化 / 円偏光発光 |
Research Abstract |
本申請研究では配位プログラミングを利用して高度に情報化された新規セキュリティーデバイスの創成を目指す。具体的には強い円偏光発光(CPL)を示すキラル希土類錯体を超分子相互作用によって集合化し基盤上に集積させる。基盤から得られる左右円偏光発光は独自開発したCPL顕微計測系によって観測する。今年度は、円偏光発光性を示す希土類(Eu(III))錯体の開発に取り組んだ。まず、キラル配位子として、面不斉を有するカンファー型ジケトン配位子facamおよび軸キラリティーを有する2座配位子であるBINAPOをEu(III)イオンの配位子として有するキラル錯体の合成を行った。これらの錯体はいずれも590nm付近に5D0-7F1および614nm付近に5D0-7F2に相当する発光バンドを示した。発光スペクトルでは614nmのバンドの590nmのバンドよりも10倍以上強いにもかかわらず、CPLスペクトルでは両者の強度はほぼ同じ程度で、590nmのバンドのg値が10倍程度大きいことが認められた。これは5D0-7F1の遷移が磁気光学遷移であることを反映している。g値は[Eu(BIPHEPO)(D-facam)3]では-0.24、[Eu((R)-BINAPO)(D-facam)3]では-0.44、さらに[Eu(TPPO)2(D-facam)3]では-0.49となった。このような序列について、配位構造との相関や発光特性との相関について検討した。[Eu(BIPHEPO)(D-facam)3]においては結晶中に異なる配位構造を有する錯体構造が観測され、結晶内で1:1の疑似ラセミ化が起こっていることが示された。また、溶液中の蛍光寿命スペクトルにおいては異なる2成分の蛍光寿命が観測され溶液中においても異なる配位構造が共存していることが示唆された。
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