2010 Fiscal Year Annual Research Report
刺激応答型クラスターの合成
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
22108525
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Keywords | クラスター / スピンクロスオーバー / グリッド / 磁性 |
Research Abstract |
スピンクロスオーバー(SCO)錯体は、熱や光、圧力等に対し高スピン(HS)と低スピン(LS)の間で可逆的を変化する為、外部刺激により電子状態を制御出来る面で非常に興味深い。一般的にSCO錯体に関する協同的なスピン転移現象は、分子間に弾性的な相互作用が強く働くことによって起こる為、分子集合体としての巨視的観点を考慮しなければならない。しかし単一分子内に強い弾性的な相互作用が働く場合ナノレベルで協同的な磁性応答を示すことが期待される。しかしこのような短距離的な弾性的相互作用に関する知見は殆どない。本研究では分子内相互作用が強いことが期待されるグリッド型Fe(II)四核クラスターにおいて二種類のカウンターアニオンを有する錯体ph-X(X=BF_4、PF_6):[Fe4(HL-ph)4](X)4を合成し、その磁気的性質について検討を行った。固体状態におけるph-X両錯体の磁気測定結果の結果ph-BF_4は半高スピン状態[2HS-2LS]を経由した協同的なスピン転移挙動が観測された。一方、アニオンの異なるph-PF_6では低温部で磁化率の急激な減少が見られたが、全ての温度領域で[4HS]を示す_<XM>T値を示しスピン転移を示さなかった。すなわち固体状態ではそのスピン状態はアニオンに依存することが分かった。一方で溶液状態では、固体状態とは異なりアニオンに依存しないスピン挙動を示した。すなわち両錯体は300Kにおいて[4HS]を示す_<XM>T値を示した。降温過程で_<XM>値は緩やかに減少したが、133Kにて明らかな変曲点を示し、_<XM>T値は半高スピン[2LS-2HS]に相当する値で安定化した。更に温度を下げると、隣接するFe(II)イオン間の反強磁性的相互作用に起因する_<XM>T値の急激な減少が観測された。両錯体は結晶状態にない為にクラスター同士の弾性的な相互作用は殆どない。しかしこれらは段階的なSCO挙動を示し、半高スピン状態が観測された。
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Research Products
(4 results)