2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙マイクロ波背景放射における非線形大規模構造の痕跡と初期宇宙モデルに対する制限
Publicly Offered Research
Project Area | The Physical Origin of the Universe viewed through the Cosmic Background Radiation - from Cosmological Inflation to Dark Ages - |
Project/Area Number |
22111502
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
坂井 伸之 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (00267402)
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Keywords | 宇宙背景放射 / 宇宙の大規模構造 / 非線形ゆらぎ / 初期宇宙 / 一般相対性理論 |
Research Abstract |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)非等方性は宇宙の晴れ上がり期の姿を反映するが、CMB光子は通過する大規模構造の重力場による二次的な影響も受ける。二次的揺らぎは原始揺らぎに対して小さくこれまで検出が困難であったが、観測の進歩によりその検出が可能な段階になった。特に注目すべき最近の観測結果は、スローンデジタルスカイサーベイで特定された50個のスーパーボイドと50個のスーパークラスターの方向のCMBデータをそれぞれ重ね合わせた結果、コールドスポットとホットスポットの温度分布が統計的に得られたこと(Granett et al.2008)である。 本研究では、上記のコールドスポットとホットスポットが本当にボイドとクラスターの痕跡であるかを検証するため、Lemaitre-Tolman-Bondi時空(ダストと宇宙項を含む球対称時空解)でボイドとクラスターをモデル化し、アインシュタイン方程式と測地線の方程式を同時に解くことによって、CMB光子の二次的な揺らぎを求めた。 数値解析の結果、観測されているコールドスポットやホットスポットに近い温度分布が上記のモデルから得られた。特に、コールドスポットの周りにホットリングができることと、ホットスポットの中央にミニコールドスポットができるという定性的特徴が再現されたことは、それらがボイドやクラスターの痕跡であることを強く示唆する。また、それらの特徴は線形摂動では決して現れない現象であり、一般相対論的非線形効果が宇宙論的スケールで初めて観測されたことの示唆としても非常に興味深い。
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