2011 Fiscal Year Annual Research Report
天然変性タンパク質の折り畳みに伴う水和状態と構造揺らぎの変化
Publicly Offered Research
Project Area | Target recognition and expression mechanism of intrinsically disordered protein |
Project/Area Number |
22113521
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中川 洋 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (20379598)
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Keywords | 生物物理 / 天然変性蛋白質 / 中性子 / シミュレーション / ダイナミクス |
Research Abstract |
天然変性タンパク質は標的分子との結合に伴い、不規則に揺らぐ構造から高次の立体構造に折り畳まれる。結合折り畳みでは、構造の揺らぎが標的分子の認識に重要な役割を担う。また生理的な溶液条件下では、タンパク質構造の安定性や揺らぎは水和水に著しく影響を受けるほか、標的分子結合に伴い結合部位では脱水和が起こる。変性構造の水和状態や、結合折り畳みにおける水和状態の変化を理解することは、天然変性タンパク質の機能発現を理解するための重要な構造基盤となる。本研究では、結合折り畳み時のタンパク質の構造揺らぎと水和状態の変化を、中性子非弾性散乱によって解明することを目的とした。スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の欠損変異体は、生理的条件下で非天然構造を取り、標的分子との結合により折り畳むなどの特徴を持ち、結合折り畳みに伴う動的構造変化や水和状態の変化など、天然変性タンパク質研究の優れたモデル系である。溶液中の野生型と変異体の中性子非弾性散乱データの解析を行ったところ、変異体の方がより強い準弾性散乱が観測された。準弾性散乱の解析により、蛋白質の折り畳みにより、~40psの構造揺らぎがより狭い空間に制限されるようになることが示された。またポリペプチドが大きく揺らいだ天然変性状態での水和状態や、結合に誘導される折り畳みによる水和状態の変化を調べることは、天然変性タンパク質の動的構造の理解に重要であると考えられる。本年度の研究の結果、変性構造では、その大きな揺らぎのために折り畳み状態で形成されているような水和構造が壊れており、変性構造の水和水は天然構造の水和水より運動性が高いことが分かった。以上の結果より、IDPの折り畳みにより構造の揺らぎは空間的に小さくなり、その変化が水和水の揺らぎとカップルしていることが示唆される。
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