2010 Fiscal Year Annual Research Report
CO2濃度上昇に対する進化的応答の分子古生物学的解析
Publicly Offered Research
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
22114504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森長 真一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (80568262)
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Keywords | 適応進化 / CO2応答関連遺伝子 / 気孔 / 生体ゲノム学 / エコゲノミクス |
Research Abstract |
産業革命以降、大気CO2濃度は上昇をし続け、特に近年の上昇速度の増加は著しい。例えば、ハワイのマウナ・ロアでの観測によれば、この50年の間に315ppmから380ppmへと変化している。そこで、このようなCO2濃度の変化が野生植物の進化的応答に与える影響を明らかにするために、モデル植物シロイヌナズナに最も近縁な植物であるハクサンハタザオの現生個体と標本個体を用いて、CO2応答関連遺伝子の時空間動態を解析した。滋賀県伊吹山と三重県藤原岳の集団を対象に、CO2応答関連遺伝子の中でも特に気孔の形態形成や密度調節に重要な役割を持つHIC、HT1、SDD1、TMM、SLAC1、STOMAGEN、SCRM1、SPCH、MUTE、MKK4、EPF2遺伝子を対象に、その対立遺伝子頻度の変化を過去100年に渡って解析した。各遺伝子についてプライマーを設計し、PCRとDNAシーケンスを行い、アミノ酸配列変異を示す一塩基多型(SNP)と挿入欠失(indel)を探索した。現生集団における多型解析の結果、HIC、HT1、TMM、STOMAGEN、SCRM1、SPCH、MKK4、EPF2の8遺伝子において、集団内アミノ酸変異が見つかった。この中には、伊吹山内のみあるいは藤原岳内のみで多型が検出された遺伝子や、生育標高と対立遺伝子頻度に緩い相関が見られる遺伝子が存在した。そこで、これらの遺伝子を対象に標本個体の多型解析を行なったところ、多くの遺伝子において対立遺伝子頻度が変動していること、遺伝子によって変動の仕方が異なることが明らかとなった。また、気孔の密度調節機能の一端を担うHIC遺伝子は時間とともに対立遺伝子頻度が変化していることがわかった。
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Research Products
(2 results)