2011 Fiscal Year Annual Research Report
piRNAの機能解析に基づくカイコの性決定機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Functional machinery for non-coding RNAs |
Project/Area Number |
22115502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝間 進 東京大学, 大学院・農学生命科学研究所, 准教授 (20378863)
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Keywords | piRNA / カイコ / トランスポゾン / piRNA生合成系 / 低分子RNA / 生殖細胞 / PIWIタンパク質 / 昆虫培養細胞 |
Research Abstract |
Piwi-interactingRNA(piRNA)は、siRNAやmiRNAに続く第3の低分子非コードRNAであり、その名の通りRNA結合タンパク質Piwiサブファミリーに結合する低分子RNAとして発見された。piRNAは生殖細胞特異的に存在するという点で、他の2種類の低分子RNAと異なっている。piRNAの生理学的研究、および生化学的機能解析に関する直接的な研究例はあまりないが、その主たる原因は、piRNAを発現している培養細胞系がいずれの生物からも見つかっておらず、piRNAの生合成系の解析が困難であった、ことにある。本研究では、カイコを用いて、piRNAと性決定・性分化との関係を解明することを試みた。またPiwi/piRNA複合体を発現するカイコ培養細胞を用いて、piRNAの生合成メカニズムや染色体外因子認識システムに関する研究も行った。最終年度である今年は以下の研究を実施し、成果を発表した。 (1)カイコの胚発生ステージ段階別のpiRNAプロファイルを精査し、母性遺伝するpiRNAの存在、およびセンス鎖のトランズポゾンRNAがpiRNAの前駆体であり、ping-pongサイクルによってpiRNAが増幅することを可視化した。 (2)カイコの性染色体変異系統を用いて、雌性決定染色体であるW染色体から産生される piRNAを同定した。 (3)W染色体上の変異が原因で雌の一部が雄化する間性系統の解析を行い、piRNAや精巣特異的遺伝子の発現が異常になっていることを発見した。 (4)カイコBmN4細胞を用いたpiRNA生合成系のin vitroアッセイシステムの構築に成功した。 (5)カイコBmN4細胞を用いてpiRNAのde novo合成に関わるローカスを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カイコの性染色体変異系統を用いて、雌性決定染色体であるW染色体から産生されるpiRNAを同定することができた。また、W染色体上の変異が原因で雌の一部が雄化する間性系統において、piRNAや精巣特異的遺伝子の発現が異常になっていることを見いだした。一方、カイコ培養細胞を用いて、プライマリーpiRNA産生経路を解明するとともに、染色体外因子の認識システムの一部を解明することに成功した。これらの結果のほとんどは論文発表済み、あるいは論文投稿中であり、当初の計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行によって、カイコをpiRNA研究のモデルシステムとして整備することができた。今後は、"piRNAの機能解析"へ移行できるようカイコ生体を用いた機能解析システムを構築する必要があると考えている。
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Research Products
(8 results)