2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウス初期胚形態形成過程における細胞死動態のリアルタイム解析
Publicly Offered Research
Project Area | Cell Community in early mammalian development |
Project/Area Number |
22116502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 良文 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (10447443)
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Keywords | 細胞死 / アポトーシス / 形態形成 / 神経管閉鎖 / ライブイメージング / FRET |
Research Abstract |
本研究課題では、ほ乳類初期胚で生じる劇的な形態形成運動である神経管閉鎖過程において、細胞死(アポトーシス)と細胞増殖が形態形成運動と相関して、どのように生じるのかを解明することを目的としている。昨年度は、カスパーゼ活性化可視化プローブSCAT3を用いて、細胞死が阻害された胚(細胞死シグナル変異体や薬剤による細胞死阻害条件下)において細胞死、細胞増殖と形態形成とのリアルタイム観察を行い、神経管閉鎖過程に生じる死細胞のふるまいには少なくとも2種類みられること、さらに細胞死シグナル阻害化ではこれらの2種類の死細胞が消失し円滑な胚の形態変化が阻害され神経管閉鎖が遅延していることを明らかにした。本年度はこれらの結果をふまえ、以下の検討を行った。まず、異なる2種類の死細胞動態の違いを生み出す要因は何かを調べた。この2種類の死細胞とは、カスパーゼ活性化後に断片化する細胞と、カスパーゼ活性化にも関わらず断片化せず丸い形態を示したまま残存する細胞である。両者におけるカスパーゼ活性化の変化を調べたところ、前者では急激なカスパーゼ活性化が見られその直後に細胞が断片化したのに対し、後者では緩やかなカスパーゼ活性化と細胞の丸い形態への変化が見られた。さらに、両者においてカスパーゼ-3の活性化が認められたのに加え、後者ではカスパーゼ-7の活性化も観察された。この活性化カスパーゼの種類の差が、アポトーシス時の細胞形態変化の原因となり、周辺細胞の動態にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。一方、細胞死阻害時に神経管閉鎖速度が低下する仕組みに対して知見を得る為に、高解像度イメージングを行い周辺細胞の形態変化と細胞死との関連を調べた。その結果、細胞死した周辺の細胞では形態変化が生じる様子が観察された。これらの結果は、細胞死が形態形成過程にどのように影響を与えるのか、解明する糸口を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は細胞死が形態形成過程に与えるマクロな影響の解明に成功しその分子機構の一端に迫る結果を得た。この成果は海外一流紙に報告することができた(Yamaguchi & Shinotsuka et al.,J.Cell Biol,2011)。さらに細胞レベルでの変化の定量化への足がかりを得たので、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は組織全体の形態変化および死細胞と周辺細胞の相互作用を、より解像度の高いライブイメージングデータの取得と画像定量解析の技術を用いて促進していく。データ解析に際しては、専門家との共同研究により新規技術の導入等も含めた検討を行なっていく。
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