2010 Fiscal Year Annual Research Report
モルフォーゲン勾配によるマウス初期胚細胞の動態制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Cell Community in early mammalian development |
Project/Area Number |
22116514
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Keywords | マウス初期胚 / 分泌性シグナル因子 / ヘパラン硫酸 / FGFシグナル / Wntシグナル / モルフォーゲン勾配 / Ext2 / 軸決定 |
Research Abstract |
Ext2は、プロテオグリカンコアタンパク質にヘパラン硫酸鎖を重合する活性を担う。本部門で同定されたExt2欠損変異胚では、FGFシグナル不全を示す。本年度は、初期胚胚体外外胚葉形成におけるヘパラン硫酸鎖の機能を解析し、以下の知見を得た。1、Ext2欠損胚では、胚体外外胚葉形成過程においてもFGFシグナル不全を示すこと、FGF4に加えFGF8リガンドの胚体外外胚葉細胞に特異的に局在するためには、細胞表面に分布するヘパラン硫酸鎖発現が必要であることを明らかにした。2、細胞膜上のヘパラン硫酸鎖と分泌された細胞外基質のヘパラン硫酸鎖のどちらが働いているか検討するため、ヘパラン硫酸鎖欠損細胞と野生型細胞が共存する凝集キメラ胚を作成し、FGFシグナルの下流分子であるリン酸化ErkやErr-betaの発現を単一細胞レベルで解析した。その結果、野生型細胞と隣接する欠損細胞では、マーカー遺伝子は、発現できるが、野生型細胞から離れた欠損細胞では、FGFシグナルは活性化されなかった。以上の解析から、細胞膜上に局在するヘパラン硫酸鎖がFGFシグナル伝達に関与し、細胞外基質のヘパラン硫酸鎖はほとんど機能しないことが示唆された。3、どのような機構で細胞非自律的なFGFリガンドによる活性化が起因しているのか、特異的な化学阻害剤が、胚体外外胚葉におけるリン酸化Erkなどの発現を検討した。結果、アクチンフィラメント、ヘパラナーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼなどの特異的阻害剤では、FGFシグナル活性に変化はなかった。一方、セリンプロテアーゼの特異的阻害剤のみ、FGFシグナル活性を低下させた。これらから、FGFリガンドとヘパラン硫酸がコアタンパク質の複合体と共にセリンプロテアーゼで切断され、周辺細胞でFGFシグナルを活性化することが示唆された。
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