2011 Fiscal Year Annual Research Report
モルフォーゲン勾配によるマウス初期胚細胞の動態制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Cell Community in early mammalian development |
Project/Area Number |
22116514
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Keywords | マウス初期胚 / 分泌性シグナル因子 / ヘパラン硫酸 / FGFシグナル / Wntシグナル / モルフォーゲン勾配 / Ext2 / 軸決定 |
Research Abstract |
1、Extは、プロテオグリカンコアタンパク質にヘパラン硫酸鎖を重合する活性を担う。マウスExt2欠損胚では、ヘパラン硫酸のみコアタンパク質に付加されていないことを、高感度HPLCを用いた二糖解析から明らかにした。また、野生型胚において、ヘパラン硫酸鎖発現とFGFシグナル活性(dp-ERK)との相関性を調べたところ、受精後3.5~6.25日目で、ヘパラン硫酸の発現領域とdp-ERK活性の高い領域はよく合致していた。以上から、ヘパラン硫酸がマウス初期胚においてFGFシグナル活性に必須であることを支持する。2、Ext2欠損胚と野生型胚による単一細胞レベルでのキメラ解析から、細胞外基質でなく、細胞膜表面に局在するヘパラン硫酸鎖がFGFシグナルに働くことが示唆された。そこで、両者に機能的な差異が生じる理由として、ヘパラン硫酸鎖の微細構造に違いがないかモノクロナール抗体を用いて解析した。結果、FGFシグナル活性の高い細胞の表面では、より脱硫酸化されたヘパラン硫酸鎖が分布していた。これは、細胞外基質と細胞表面でのヘパラン硫酸の微細構造の違いが、ヘパラン硫酸の機能的な差異を生む一因であることを示唆している。3、我々は、マウス前脳領域においてWntシグナルがエピブラストから神経前駆細胞又は表皮細胞への細胞運命を制御していることを明らかにしている。今年度は、どのような下流標的因子を介して制御しているのか明らかにするため、8日目胚の前脳神経上皮と隣接する表皮外胚葉を用いて、マイクロアレイ解析を行い、表皮外胚葉特異的に発現する標的候補群をプロファイリングした。更に、詳細に発現解析を行うことで、候補遺伝子が、発生過程において表皮外胚葉の系譜で発現していること、Wntシグナル活性の挙動とも良く一致することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘパラン硫酸鎖を介して、FGF等の拡散性シグナル因子の活性がどのように制御されうるのか、マウス初期胚発生過程における細胞動態や分子の発現を詳細に解析することによって、新規な知見(ヘパラン硫酸鎖の脱硫酸化などの微細構造の差異がFGFシグナルの局所的活性と相関する点等)を見いだしており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Ext2欠損胚では、原条形成は起こるが、中胚葉の移動が正常に進行しないことが分かっている。そこで、中胚葉の移動過程において、拡散性シグナル因子が、ヘパラン硫酸鎖を介してどのように細胞動態を制御しているか明らかにするため、ヘパラン硫酸鎖、拡散性シグナル因子、中胚葉細胞の移動に働く分子などの発現を単一細胞レベルで解析する。
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