Research Abstract |
過渡的複合体を細胞,組織および個体レベルで,高解像度で観測するためのケミカルプローブの開発を目指して以下2項目の研究を行った。(1)超解像度顕微鏡で用いるための新しいケージドフルオロフォアの開発:PALM観察で用いられる光活性化蛍光タンパク質には,サイズが大きい,色が限られている等の制限がある。低分子量有機蛍光色素を用いることができれば,PALMの適用範囲は大きく広がる。そこで,我々のグループで開発した光分解性保護基であるBhc基を用いて,生細胞内で任意のタンパク質をラベル化可能な,新しいケージドフルオロフォアの開発を目指して研究を行った。今年度は,xanthene系蛍光色素としてフルオレセイン(黄緑色蛍光)を選び,Bhcケージド化合物への変換を検討し,Bhcmoc-caged fluorescein (1)を合成した。Bhcmoc-caged fluoresceinは,338nmに吸収極大(ε=21,000M^<-1>cm^<-1>)を持ち,生理的条件を模した緩衝溶液中,350nm光照射によって定量的にpropargyl fluorescein (2)を生成することを明らかにした。このときの光反応効率はΦε=500で,2-ニトロベンジル基を持つケージド化合物より10倍程度効率が高いことも分かった.また,化合物1の蛍光強度は,化合物2の1%以下であることも確認した。(2)高解像度in vivoイメージングを実現するケミカルプローブの開発:高い効率で2光子励起できるケージドホタルルシフェリンを開発し,生物発光による個体イメージングで3次元の空間分解能を得る新しいイメージング法に展開することを目指した。今年度は,ホタルルシフェリンの4位のカルボキシル基をBhc基またはBmc基で保護して,Bhc-fLuciferin (Bhc-fLuc)およびBmc-fLucferin (Bmc-fLuc)をそれぞれ合成した。350nm光照射でBmc-fLucからfLucが生成することを確認した。また,Ti-Sapphireレーザーを用いて2光子励起条件で光反応したところ,740nm光照射におけるaction cross-section, δ_u=0.7GMの効率で光分解することも明らかにした。
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