2022 Fiscal Year Annual Research Report
A comprehensive research on the transformation of stone ornaments from the Palaeolithic to the Jomon in Hokkaido, Japan
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Human Historical Science of "Out of Eurasia": Exploring the Mechanisms of the Development of Civilization |
Project/Area Number |
22H04443
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 純 北海道大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (30344534)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 装身具 / 旧石器時代 / 縄文時代 / 北海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に旧石器時代の装身具を対象として研究を進めた。旧石器時代の装身具に関しては、北海道内で発見されている装身具の標本を対象に顕微鏡観察を実施し、製作工程と製作方法の推定をおこなうための基礎的データを取得した。次に旧石器時代の装身具を製作する際に重要となる穿孔具を見出すために、細石刃石器群が検出されている遺跡において錐形石器の使用痕分析を実施し、穿孔作業の有無および対象物についての推定を試みるための基礎データを取得した。成果については別途、論文にまとめ公表する予定である。装身具の微視的観察ならびに石器の使用痕分析の成果については、第22回北アジア調査研究報告会で口頭発表をおこなっている。 また、旧石器時代の装身具は、北海道でもこれまで確認されてきた実例が限られるため、研究を推進するためには新たな資料の獲得が必要となる。旧石器時代遺跡である道南の蘭越町立川1遺跡において発掘調査を実施し、細石刃石器群および有茎尖頭器を含む複数の石器集中部を確認した。発掘調査では石器の産出層準および分布の把握を進めている。今年度の調査では装身具の発見は至らなかったが、装身具が伴う可能性のある石器集中部の遺存を確認しており、次年度も引き続き発掘調査を同遺跡で実施することとなっている。 北海道の装身具との比較のために、ユーラシア大陸における旧石器時代の装身具の素材、形態、技術については、悉皆的なデータベースを作成し、時空間の傾向について調査を進めている。分析の成果の一端については、今後、総括的な論文の執筆を目指している。有機質素材のなかでも特徴的なダチョウの卵殻製ビーズについては、分布・時期・形態・組み合わせなどの傾向に関して、口頭発表をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、北海道の旧石器時代から縄文時代にかけての石製装身具を対象として、原材料の入手から製作・使用に至る過程を動作連鎖の観点から総合的に分析し、その変遷過程を明らかにするとともに、そこで得られた分析結果をユーラシア大陸の石製装身具と対比させ、相互の関係性を検討していくことを目的としている。旧石器時代の装身具に関する分析においては、玉類の微細痕跡の観察ならびに玉類の製作に関与していた可能性がある錐形石器の使用痕分析を進めた。玉類の分析からは製作工程および製作方法が推定できることになったとともに、錐形石器の分析からは玉類の穿孔以外にも様々な機能を担っていた実態が把握されつつある。また、これまで旧石器時代のものではない可能性が指摘されていたピリカ遺跡E地点の出土資料についても再検討作業を進め、その出土状況、型式学的特徴、製作技術の諸点から、旧石器時代のものである可能性が高いことを把握するにいたっている。 旧石器時代の北海道における装身具の研究を推進するためには、新資料の獲得が必須であるが、そのための発掘調査を立川1遺跡において実施した。調査の結果、遺跡内において細石刃石器群および有茎尖頭器を伴う石器集中部の存在をそれぞれ確認している。微細遺物の回収も念頭においた調査方法を取り入れており、それによって石器集中部に伴う微細な装身具の検出も可能となっている。まだ石器集中部の完掘にはいたっておらず、装身具関連資料も検出にはいたっていないが、今後、調査を継続させていくことによって、多くの課題の解決に資するであろう見通しが明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、旧石器時代から縄文時代初頭にかけての装身具に利用されている岩石の分布と産状を検討するとともに、採集した岩石サンプルと考古資料で化学組成分析を実施し、相互の対比によって産地推定を試みることを計画していた。今後は、装身具の岩石学的検討を進め、岩石種の同定と化学組成の把握をおこなっていくとともに、旧石器時代と縄文時代初頭の装身具に利用されていたであろう岩石の産地についても調査を進め、より蓋然性の高い産地推定の実現を目指した分析をおこなっていく。これによって、装身具の製作にかかわって実施されていた素材獲得行動とその時間的変化の復元にもつなげていきたい。 旧石器時代の玉類製作に関しては、錐形石器を利用した穿孔が必須の工程になっていたと想定されるが、そうした穿孔具の特定がこれまでの研究ではなされてこなかったため、使用痕分析を継続的に実施して、この問題の解決に取り組んでいきたい。錐形石器による穿孔作業の対象には、石製玉類のみならず有機質素材の玉類もあった可能性が高いことから、使用痕による弁別が可能なのかどうかについても実験的に検討していく。こうした検討を通して間接的にではあるが、北海道の旧石器時代における装身具の素材や製作技術の変遷の実態に迫っていきたい。
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Research Products
(10 results)