2022 Fiscal Year Annual Research Report
触媒表面機能コア制御による二酸化炭素還元光触媒設計への挑戦
Publicly Offered Research
Project Area | New Materials Science on Nanoscale Structures and Functions of Crystal Defect Cores |
Project/Area Number |
22H04511
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉田 朋子 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 教授 (90283415)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子助触媒 / 人工光合成 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機ナノテンプレートを利用したり,新たに液中プラズマ法を導入することにより1 nm~数十 nmまでの様々なサイズのAgナノ粒子を合成する方法論を確立した.特に液中プラズマ法によるAgナノ粒子の合成においては,液中プラズマ放電システム(石英ガラス製反応容器,金属ロッド電極,パルス発生電源から構成)を新たに構築し,プラズマ放電条件(パルス電圧,パルス幅,周波数)や,水溶液の導電率を制御しながら,電極から銀などの金属ナノ粒子を定常的に生成させるための条件を探索し整理した.有機ナノテンプレートや液中プラズマ法を用いて合成した銀ナノ粒子助触媒を酸化ガリウム上に安定化させた光触媒(Ag/Ga2O3)を調製し,この光触媒を用いて人工光合成反応(二酸化炭素の水による還元反応)を進行させ,CO, H2, O2を生成させることに成功した.また調製した光触媒を高空間分解電子顕微鏡を用いて観察し,Ag粒子,Ag-Ga2O3界面,Ag粒子近傍のGa2O3とサイトごとに明確に区別できることを確認した. 一方,反応基質(水やCO2分子)と光触媒最表面活性サイト(機能コア)との相互作用を観察するための複合型分光測定システムの設計に着手した.小型の真空チャンバーに試料ホルダー(試料の加熱可能)や真空ポンプを取り付けたものであり,真空排気,反応ガスの導入,光照射といった反応環境の再現が可能であるシステムを構築しつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液中プラズマ放電システムを用いた金属ナノ粒子の合成は,プラズマ工学分野を中心として,国内外でも進められてきているが,合成した金属ナノ粒子のサイズは放電後のTEM観察などによって初めて明らかになることから,合成中に金属ナノ粒子のサイズを制御することは従来困難であった. これに対して本研究では,水中に存在する金属ナノ粒子は,それぞれの化学状態や形状に応じて紫外・可視領域の光を吸収することを利用して,プラズマ放電中に反応容器に外部から紫外・可視光を入射させ,UV-visスペクトルのその場測定を行うことにより,金属ナノ粒子のサイズだけでなく量についても把握できるようにした.具体的には,放電時間に対する吸収波長・強度の変化と,生成した金属ナノ粒子のTEM/XAFS測定による粒子径評価を対応させ,プラズマ放電条件や時間に対する金属ナノ粒子のサイズ・量の変化をin-situ UV-visスペクトルの測定から直接評価し,ナノ粒子合成中に制御した.この試みにより液中プラズマ放電システムを用いた銀などの金属ナノ粒子の合理的な合成が可能になり,順調に研究が進んだものと思われる. 合成した銀ナノ粒子助触媒を酸化ガリウム上に安定化させた光触媒(Ag/Ga2O3)の調製や,この光触媒を用いた人工光合成反応(二酸化炭素の水による還元反応)については,これまでの触媒調製や反応実験に関するノウハウもあり,経験も豊富であることから,問題なく実施できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引き続き,サイズ制御された金属ナノ粒子助触媒(主に銀ナノ粒子助触媒)の合成と光触媒の調製,人工光合成反応(二酸化炭素の水による還元反応)実験を実施する.また2023年度には,複合型分光測定システムを構築し,これを放射光実験施設のビームラインに取り付ける予定である.このシステムを用いて,Ag/Ga2O3光触媒に反応基質(水やCO2分子)を導入したり光照射をしながら,XAFS測定をし解析することで,反応分子と相互作用する活性サイトを同定する. 一方,Ga2O3の多形に注目し,異なる結晶構造(α, β, γ, ɛ相など)を,α/β, β/γなど様々な組み合わせで接合する助触媒非担持型光触媒を設計したい.Ag/Ga2O3光触媒の活性サイトの構造・電子状態を模倣するように,Ga2O3中に結晶欠陥を導入することで,水による二酸化炭素還元反応において,高い活性と耐久性を示す新規光触媒の創製を目指す.更にSTEM/EELS分析によって,異なるGa2O3結晶粒の界面に形成された欠陥を可視化したり,反応中の複合的分光測定によって反応に伴う欠陥構造や反応メカニズムの変化を追跡したい.これらの測定分析法を本研究領域において提案される固体材料中の「機能コア」物性分析に応用するだけでなく,材料中の様々な結晶欠陥を応用した新奇熱触媒・光触媒の創製に関する研究へと展開するなど,多くの研究者との共同研究を強力に推進したい.
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