Publicly Offered Research
本研究では、水素結合と配位結合を駆使した超分子的アプローチに基づき、水分子の挙動の詳細な理解を通じた、水圏で機能する水素結合型レセプターの機構解明と強靭性材料の開発を目的とした。研究代表者および共同研究者らは前年度までの研究で、7つのN-メチルピリジニウムアミド基をもつβシクロデキストリン誘導体がリン酸イオンを選択的に認識すること、およびその包接駆動力がリン酸の疎水基によって異なることを、温度可変ITC測定などの実験で明らかにしてきた。具体的には、アダマンチルリン酸では疎水効果が、フェニルリン酸ではそれ以外が包接の主な駆動力として働いていると考えられた。本年度は、分子動力学(MD)計算と実験を組み合わせて、水分子を含めたリン酸包接挙動の詳細な描像について検討を行った。MD計算中の水素結合に着目したところ、フェニルリン酸については、フェニル基と直接結合したエステル酸素とアミドN-Hプロトンとの間に水素結合が存在している構造が高い頻度で出現した。一方、アダマンチルリン酸については、アダマンチル基がシクロデキストリン内孔に強くトラップされることにより、リン酸末端の酸素原子のみがアミドN-Hプロトンと水素結合を形成している構造が支配的であった。このMD計算の結果は、NOESY NMR測定で得られた実験結果と一致していた。全体として、フェニルリン酸ではリン酸がやや上側に位置し、水素結合や全体の配置エントロピーの寄与で包接され、アダマンチルリン酸では疎水基が内孔にトラップされてやや下側に位置し、疎水効果と水素結合の両方の寄与で包接されるという、興味深い認識様式の違いが明らかとなった。また、前年度に引き続き、金属配位結合の形成/解離を利用して他の可逆相互作用では実現できない強靭性を示す超分子ヒドロゲルの創製に向けた領域内共同研究を推進した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (33 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 4 results) Remarks (1 results)
Chemical Communications
Volume: 60 Pages: 1281-1284
10.1039/D3CC06216C
Inorganic Chemistry
Volume: 62 Pages: 12886_12894
10.1021/acs.inorgchem.3c01571
https://www.chem.tsukuba.ac.jp/nakamura/