2022 Fiscal Year Annual Research Report
Functionalization of a porous aquatic material with asymmetric hydrate network structures
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田代 省平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80420230)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多孔性結晶 / 水圏機能材料 / 水クラスター / 単結晶X線回折 / パラジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔性結晶metal-macrocycle framework (MMF)の一次元細孔内に捕捉された巨大かつ低対称な水クラスターの構造と動的性質を明らかにするために、温度可変単結晶X線回折測定やDSC測定を進めた。例えば温度可変単結晶X線回折測定では、室温から低温側に下げながら結晶構造のスナップショットを撮影する方法や、室温から低温への降温と再び室温への昇温サイクルを連続して行った場合などについて検討を行った。室温から低温側への冷却過程については、大きな結晶性の低下を伴わずに複数枚のスナップショットを撮影することに成功し、冷却に伴って水クラスターが徐々に成長していく過程を明らかにすることができた。この結果から、細孔内のサイトに応じてそれぞれの水分子が異なる動的性質を示すことを見出した。例えば、細孔壁との水素結合の形成によって段階的に水が配列していく過程や、冷却に伴って協働的に水が配列するサイトが存在することがわかった。また各水分子の温度因子を精密に解析して、温度に対するプロットを作成することにより、各水分子の温度に対する動的挙動の比較検討を行った。一方で、降温と昇温を一サイクルとして連続測定を行った場合では、昇温過程における結晶性の劣化が問題となり、定量的な議論を行うことが困難であった。一方で、同様の温度変化サイクルについてDSC測定より検討を行ったところ、降温過程では複数のピークが観測された一方で、昇温過程では明確なピークが観測されなかったことから、降温と昇温プロセスにおける水クラスターの凝固・融解過程が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度変化単結晶X線回折測定では、冷却過程については同一サンプルにてスナップショット撮影を行い、温度因子の比較に基づく精密な議論を行うことができたため、この点については予定通りに研究が進捗して興味深い結果が得られた。一方で、冷却に続く昇温過程について結晶構造解析から議論することはやや困難であったが、代わりにDSC測定を行うことによって、冷却、昇温過程が明確に異なることがバルクサンプルについても確認された。したがって、計画に対して概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き同実験の検討を進めることにより、細孔内の各水分子の温度依存性について明らかにしていくことを目指す。また、X線回折測定では水分子の酸素位置のみが一般的には決定でき、水素位置を決定することは困難であることから、細孔内に形成された水クラスターの水素結合ネットワークを可視化することが困難であった。そこで今後の方策としては、水素位置の情報を得る手段として、単結晶中性子回折測定を検討する。また、水クラスターが結晶細孔の構造や安定性に与える影響についても着目して、今後は実験と議論を進める予定である。
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