2022 Fiscal Year Annual Research Report
Consideration of hyperspace atomic arrangement governing ion exchange properties of hydrospheric functional materials
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04533
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
手嶋 勝弥 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00402131)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フラックス法 / 結晶 / 水圏機能材料 / 原子配列 / 計算科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次の2つの課題「(1)計算科学および精密分析併用による超空間原子配列決定因子の解明」および「(2)準安定相を活用した水圏機能材料の高機能化と新規材料探索」から成る。本年度は,特に課題(1)に注力した。 課題(1)では,初期ターゲットとして,現地配列と空間群に相関性のないNiFe系層状複水酸化物(LDH)を選択した。初年度は,Feイオン含有率[x=M3価/(M2価+M3価)]が0.2から0.7となるように調整して前駆体酸化物結晶を育成し,引き続き,加水分解処理,還元処理および層間イオン交換を実施することで,目的のNiFe系LDH結晶粒子を得た。特に,研究代表者の合成方法では,LDH創製の上限値がx=0.6であると判明した。この値は従来法では実現できない上限値となっている。さらに,各組成比のNiFe系LDHのホスト層内原子配列をXAFS分析し,互いの金属原子周りの秩序性を理解した。その結果,Fe原子周りの秩序性は0.3にて,Ni原子周りの秩序性は0.4にて増大することを明らかにした。X=0.3以下の場合,Fe原子はランダム配列となり,2つ以上のFe原子が隣り合うことなく,0.4では2つのFe原子が隣り合い,また,0.5以上では隣り合う確率が増大してクラスター化する可能性を見いだした。フッ化物イオン吸着性能を評価したところ,吸着容量はx=0.4で最大となり,それ以下でもそれ以上でも順次減少することがわかった。また,吸着試験後も結晶構造を維持しており,含水量はすべての組成で増加していたため,吸着(イオン交換)反応に伴い,水分子も層間にインターカレートすることが示唆された。しかし,含水量と吸着量に相関性は見られず,吸着特性への影響は不明である。このように,原子配列を制御したNiFe系LDH結晶粒子が高い吸着容量を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ層間に働く分子間相互作用として,陰イオン-陰イオン/水分子による相互作用やホスト層(金属イオン)-ゲスト層(陰イオン)相互作用が存在する。また,ホスト層に存在する金属原子の固溶限界を拡大するようなFeイオンクラスタリングを実現できれば,陰イオンの分子サイズ選択性の発現が期待できる。初年度の研究において,(1)計算科学および精密分析併用による超空間原子配列決定因子の解明では,特に,XAFS分析を活用し,NiFe系LDHホスト層内の原子配列の詳細な理解に努めた。加えて,動径分布関数から,その原子配列を予測した。それらの結果,各金属原子(FeやNi)周りの秩序性の違いから,ホスト層内の金属原子配列を高確率で予測できる方法を見いだした。もちろん,XANES分析では,FeやNiのK端を解析することで,ホスト層内金属イオンが目的通りの価数で存在することを確認できている。また,他の分析手法と組み合わせることで,原子配列制御などの理解が大幅に深化した。 同時に,そのような原子配列制御を可能としたNiFe系LDH結晶粒子の創製にも成功し,その陰イオン交換にて特異な性能を発揮することを見いだしている。このように,ホスト層の正電荷(Ni2+とFe3+)の配列が,電荷補償する(層間に存在する)陰イオン間の相互作用を支配する可能性を実証できた。なお,水圏機能材料として,他の研究班に貢献できる体制を構築するとともに,翌年度の研究につなげるための事前研究にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究期間の最終目標は,研究代表者が得意とするフラックス法をコア技術とし,超空間原子配列を自在制御することで,ダントツなイオン交換性能を発現する結晶材料を創製することである。今年度(初年度),ホスト層のNi原子とFe原子の配列制御を可能にする結晶粒子創製方法を探索し,NiとFe比率を変更することで,金属原子クラスター配列制御の可能性を見いだした。この配列制御により,陰イオン交換性能を引き上げられることも実証した。特に,次年度(第2年度)には,上述内容の深堀りだけでなく,イオン交換反応の更なる精密解析などに努め,反応制御する因子を見える化し,経験に頼らない結晶粒子創製を目指す。 また,次年度(第2年度)には,準安定相を活用した水圏機能材料の高性能化に取り組む。特に,原子配列に影響を及ぼす反応中間体や前駆体の組成や結晶構造を検証することで,更なる性能向上を目指す。加えて,フラックス法×超空間原子配列×精密解析・シミュレーション技術から得た成果と領域メンバーとの連携により,新たな水圏機能材料の提案も実現できると期待する。なお,本領域計画班が保有する多様な精密分析・解析技術(中性子回折など)を導入することで,ワンランクアップした機能材料になるだけでなく,ナノテク分野でのマテリアライズに貢献できると考える。
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Research Products
(11 results)