2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of environment-responsive fluorescent molecules based on excited-state intramolecular proton transfer in aquatic environment
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04540
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 庸明 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 講師 (50632907)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛍光 / 水溶性 / ESIPT / プロトン移動 / 二重発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「水溶性を有し、分子分散/凝集状態のいずれにおいても分子内水素結合を形成し、ESIPT型蛍光を高効率で発する化合物を合理的に設計し、化合物ライブラリを構築する」ことを主目的としていた。 2-(2-hydroxybenzoxazole)(HBO)をESIPT性骨格として採用し、種々の分子設計を試した結果、水溶性の確保には分岐グリセロール基あるいはグアニジニウム塩酸塩が有効であること、一方でアンモニウムヨウ化物塩やスルホベタイン構造では不十分であることを見出した。合成した二種のHBO誘導体の水中での蛍光量子収率Φは14%および23%であり、いずれもMeOH中(16%および33%)より低下した。水の高い水素結合ドナー/アクセプター性によって、無輻射失活が促進されていることが推測される。これらのΦの値は非常に高いとは言えないが、しかし過去の限られた報告例のある水溶性ESIPT誘導体を考慮すると、非常に高く、特に水中で分子分散が保証された中性/イオン性誘導体を1つずつ設計指針の確立ができたことは、意義があったと考えられる。 Φの値は水溶性置換基ではなく、HBO骨格に直接結合したリンカー構造であるトリアゾール基あるいはアルキン基が主として決定しており、特にアルキン基のときは、水中であってもほぼketo*発光のみが示されることを明らかにした。リンカーの構造選択によってESIPT過程の起こりやすさ(活性化エネルギーの大きさ)を制御することができ、水素結合性溶媒中でもketo*発光を主とすることが可能という貴重な知見を得た。 また、脂質二重膜中に水溶性HBO誘導体を導入できることを確認し、膜中でもketo*発光を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ターゲットとして選択したHBO骨格に関し、その置換基や溶媒の水素結合性によってどのようにenol*/keto*発光強度比や蛍光量子収率が変化するか、基礎的な知見を得ることができ、古典的なモデルを使って定性的に説明することができた。これは、意外にもこれまで明確に述べた研究例がなく、ESIPT化合物の設計指針として大きく貢献することが期待される。また、当初の予定である水溶性の分子設計の確立についても、完了することができた。応用展開は二年目の課題となるため、総合的には「(2) おおむね順調に進展している」、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、水溶性かつ水中でenol*/keto*二重発光性を有し、十分な蛍光量子収率を示す誘導体の合成と、その水に応答してenol*発光の相対強 度が増大する特性を活かし、脂質膜中で水透過をプローブする応用実験をおこなう予定である。 前年度の知見を活かし、2-(2-hydroxybenzthiazole)(HBT)をESIPT性骨格として選択し、フェニレンエチニレンリンカーを介して分岐グリセロール基あるいはグアニジニウム基により置換することで、水溶性を担保しつつ、enol*/keto*二重発光性を付与することを意図した分子設計をお こなう。量子化学計算により無輻射失活を引き起こす過程のエネルギーバリア(前段階と遷移状態のエネルギー差)を迅速に計算し、二重発光性 が起こりやすい構造になっているかを確認する。 分岐グリセロール基を施した誘導体について、ジクロロメタンのような疎水性溶媒中ではketo*発光のみが観測され、MeOHやDMSOのような水素結合ドナー/アクセプター性溶媒中ではenol*発光が示されることを確認する。その後、水への溶解性・分子分散性を評価し、特に水中でもenol*/keto*二重発光性が示されることを確認する。最後に、脂質膜中への当該ESIPT発光体の導入実験をおこない、脂質膜中ではその疎水環境によ りketo*発光が強く示されるが水が膜を透過する際にはenol*発光が相対的に増大することを確かめ、水プローブとして機能するか評価する。
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