2022 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular dynamics simulations of the dynamic state of water molecules in aquatic functional materials
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04542
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金 鋼 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20442527)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高分子 / 水和構造 / 水素結合 / 分子シミュレーション / ガラス転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
poly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA) は血液適合性材料であり,人工血管等に用いられている。血液適合性の発現には血液と材料の接触時にタンパク質の吸着や変性を抑制する非血栓性が必要と考えられている。PMEA表面と緩く相互作用した水分子の存在が非血栓性の由来とされているが、その詳細は不明な点が多い。実験的にPMEA近傍の水分子構造や性質を明らかにするため、示差走査熱量計(DSC)での測定が行われている。そこで、0℃で凍結する水以外にも昇温過程において-40℃付近で低温結晶生成する水や、-110℃でも凍らない水が確認された。各状態を自由水、中間水、不凍水と定義され,中でも中間水はPMEAで見られる特異な性質を持つ水分子として知られる。一方で分子動力学(MD)シミュレーションを用いた先行研究によれば、水分子の状態はPMEAとの水素結合本数で分類され、存在比率から不凍水、中間水、自由水に対応付けが可能であることが報告されている。しかしながら、高分子内における水分子のダイナミクスについての整理は不十分であり、そこで本研究ではPMEA中の水分子の水素結合を結合相手となるアクセプター酸素に着目したダイナミクスの解析と水分子の動的性質の整理を行った。その結果、水素結合寿命時間の含水率依存性は、アクセプターを用いて整理することが可能であることを見出した。また、メトキシ基酸素の水素結合寿命が、他の官能基よりも1桁近く早く、水分子の並進運動に強い制限がされているが、回転の束縛する相互作用が弱くなっていることがわかった。PMEAに特異に見られる水素結合の性質は、メトキシ基の緩い水素結合が主要な役割を果たすことを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
優れた抗血栓性を示すPMEAにある水分子の状態について、分子動力学シミュレーションから網羅的に解析した研究である。特に、水素結合ダイナミクスに着目し、過冷却水やガラス転移の研究と比較しながら新奇知見を見出している。一連の解析枠組を、より一般の水圏機能材料へ応用するこもも可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
含水率だけでなく温度依存性を考慮することにより、実験に対応する過冷却下でのPMEA中の水分子の運動性を解析する。また、動的構造因子の計算をすることにより、中性子散乱で得られる情報と比較検討をおこなう。
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