2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of inhomogenious structure of aquatic functional materials using soft x-ray spectroscopy calculations
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04550
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 修 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60253051)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子状態計算 / 軟X線分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
水の構造およびダイナミクスはその物性と直結しており、水溶液の機能発現を探る鍵の1つである。構造を探るツールとしての軟X線は元素選択的励起が可能であり、励起原子周辺の局所構造の情報を獲得できる。さらに理論モデルと合わせることにより、溶液内の不均一性に基づく分子レベルの明瞭なモデルを構築できる。最近研究代表者は液体エタノール、水の軟X線スペクトル計算を行い、これら液体の局所構造を解明した。本領域研究では、水性機能性ポリマーに対しXAS,RIXSのような軟X線分光によって得られた実験スペクトルを直接理論的に計算する。 本年は公募研究として参画した初年度であった。機能性ポリマーであるポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(poly-N-isopropylacrylamide,PNIPAM)の水和構造の理論計算を行った。32℃付近を境に、低温では水に溶解し、ポリマー鎖が伸びた構造をとるが、高温では脱水和による相転移が起きて凝集するという特異な性質を有する。PNIPAMのモデルモノマーに対し、水分子の水和数を増加させると531eV付近のピークが徐々に高エネルギー側にシフトする傾向が得られた。現在実験結果とあわせ論文を準備中である。また申請書にはない研究テーマとして、本新学術研究に参加することで新たな共同研究を開始させている。A1班の橋川先生とフラーレン内包水の構造研究、A2班の原田先生とエタノール水溶液の水和構造の研究、A1班の加藤先生と水処理膜の水和構造、A1班の堀内先生と有機無機複合体結晶中の水の構造などである。 研究論文は2報、学会発表は国内学会を2件、国際学会を2件(1件は招待講演)行った。また雑誌「現代化学」への広告記事掲載のため、取材を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した機能性ポリマーであるPNIPAMの水和構造の理論計算はほぼ終了し、現在論文執筆中である。もう1つ候補に挙げていたNafion膜の水和構造については現在モデル構築中である。また、本新学術研究に参画することで多くの研究者と出会うことができ、人脈を広げることができた。新たな共同研究がはしりだし、活発に研究活動を推進している。フラーレン内包水の研究は現在論文執筆を行っている。エタノール水溶液の水和構造について、モデル構造は分子動力学法により構築が終了し、現在XES計算を実行中である。 水処理膜の水和構造について、分子動力学法によるモデル構造の構築を行っている方に現在構造提供を依頼している。有機無機複合結晶中の水の構造について、X線構造解析の実験データをもとに現在水分子の水素原子の位置を分子軌道法に基づき計算を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上にあげた共同研究を本年度中に完成させ、論文発表できるように仕上げていく。具体的には、Nafion膜の水和構造について、モデル構造を分子動力学シミュレーションに基づき構築し、XES計算を行う。エタノール水溶液の水和構造について、XES計算をすすめ、実験スペクトルとの対比を行い、メカニズム解明を行う。有機無機複合結晶中の水の構造について、分子軌道法に基づき水素結合構造を決定し、XES計算をすすめる。
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