2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Water-mediated Organic-Inorganic Supramolecular Crystals
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04554
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀内 新之介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (50755915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分子集合体 / 細孔性結晶 / 単結晶X線構造解析 / 水クラスター / 放射光赤外分光 / 放射光軟X線分光 / 水の構造・運動 / エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、レゾルシンアレーン・カチオン性Ir錯体を共結晶化させると、それらが分子間相互作用で複合体化した超分子結晶が得られること、および得られた超分子結晶は水分子で満たされた1次元細孔を有しており、細孔壁面に特異な水クラスターを形成することを見出している。1次元細孔に含まれる水分子の赤外吸収スペクトルの測定にも成功しており、細孔内の水はバルクの水とはスペクトルが大きく異なることも確認できた。これは水分子が材料界面から強く相互作用を受けるためであり、水分子と材料界面の距離によってその強さが変化することも確かめられた。 本年度は、1次元細孔内の水分子の電子状態を明らかにするため、大型放射光施設SPring-8 BL07LSUで軟X線分光解析を試みた。水の酸素1s軟X線発光スペクトルは、水分子の水素結合状態を反映したデータを得ることができる。例えば、バルクの水ではice-likeな正四面体構造の水分子と乱れた水素結合を持つ水分子のピークがおよそ1:1で観測される。一方、超分子結晶内の水分子の軟X線発光スペクトルでは、乱れた水素結合を持つ水分子の割合が多く観測された。これは、細孔空間に置かれた水分子は熱力学的に安定な正四面体構造の水素結合ネットワークを取りきれず、水素結合に欠損を持つ集合構造を取りやすいをことを意味している。このことから、歪な界面構造を持つ材料界面近傍に存在する水分子は、材料界面からの相互作用を強く受け、乱れた水素結合ネットワークを取りやすいことを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、我々が開発した超分子結晶の細孔空間を活用し、材料界面近傍に存在する水分子の集合構造や性質解明を行うことである。本年度は、超分子結晶に含まれる水分子の性質を放射光を用いた分光測定によって明らかにすることができた。得られた分光測定の結果は、いずれも結晶構造解析によって観測された水分子の集合構造・動的性質を整合性よく説明できるものであった。超分子結晶の細孔内部の水に関する主要な測定データを得ることができ、あとは予備実験を残すのみである。これらの進捗状況を総合的に判断すると、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、水圏で合成される結晶性化合物の創出と材料中に含まれる水分子の性状解明を進める。材料中に含まれる水分子の構造は単結晶X線結晶構造によってオングストロームオーダーで明らかにできるため、この利点を活かした研究を進める予定である。例えば結晶構造解析で観測された水クラスターの座標データは、様々な計算科学的な解析の初期構造として有用である。そこで、結晶中に含まれる水分子の性質を領域内共同研究によって計算科学的な側面からも明らかにしていく予定である。
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Research Products
(9 results)