2022 Fiscal Year Annual Research Report
Aquatic Mesoscopic Ordered Structure Produced by Selective Hydration
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
22H04555
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
檜垣 勇次 大分大学, 理工学部, 准教授 (40619649)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相分離 / ブロック共重合体 / 水溶性高分子 / メソ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、両親水性ブロック共重合体水溶液で形成される水圏ミクロ相分離構造と構造形成機構の解明を目指している。今年度は、ナノスケールの双性イオン高分子ドメインに閉じ込められた水の水素結合状態を放射光軟X線発光分光測定、ブロック共重合体水和水の結晶化挙動を示差走査熱量測定により計測し、ミクロ相分離と水和水の状態の相関を研究した。その結果、ミクロ相分離により水和水の水素結合状態が僅かに歪んだ氷様のネットワーク構造となっており、緩やかに水素結合して結晶化が抑制された水和水が形成されやすいことを明らかにした。すなわち、相分離したブロック共重合体の界面近傍の分子鎖に水和している水は、分子鎖の界面への束縛、あるいは界面張力に起因して異常な状態にあることを示している。これらの研究は、新学術領域の研究者との共同研究として実施された。 さらに、水溶性双性イオン高分子であるポリカルボキシベタインが、水、エタノールに可溶で、水とエタノールの混合溶媒に不溶である共貧溶媒効果を発見した。統計力学シミュレーションにより双性イオンの分子構造に応じて水、エタノールとの相互作用が変調され、共貧溶媒効果による分子鎖凝集挙動が変化することを明らかにした。このポリカルボキシベタインの共貧溶媒効果を制御することで、共貧溶媒効果によって特定の溶媒組成において特異的にミクロ相分離が誘導され、溶媒組成と濃度に応じて相分離構造が変化する新たな分子システムを構築することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた軟X線発光分光測定と示差走査熱量測定によるブロック共重合体水和水の分析を実施し、水和水構造のミクロ相分離による変化を示唆する結果を得た。今年度は実験結果の詳細な解析と学術論文の公開をする予定であり、概ね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
水溶性ブロック共重合体薄膜の加湿状態における水和状態を中性子反射率測定により研究する。ミクロ相分離構造の周期相当の膜厚である薄膜は、界面張力に応じてミクロ相分離構造が配向すると推測される。加湿により共重合体が水和することで、体積分率と界面張力の変調が協奏的に作用することでモルフォロジー転移や周期構造の配向変化が惹起されると推測している。このように、量子ビームの相補利用により両親水性ブロック共重合体の水和の実態を追求する。 さらに、シミュレーションや理論を専門とする領域研究者との共同研究を発展させ、実験結果から普遍的原理を導く。
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