2022 Fiscal Year Annual Research Report
To investigate non-linear evolution of collective neutrino oscillation in matter and its effects on supernova neutrinos
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling the History of the Universe and Matter Evolution with Underground Physics |
Project/Area Number |
22H04577
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加藤 ちなみ 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (40850946)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ集団振動 / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
集団振動はニュートリノ同士の相互作用によって引き起こされるニュートリノ振動の一種で、現在超新星爆発のみならず高密度星の連星合体などのダイナミクスに影響を及ぼすことが示唆されている。しかし、非常に高い空間及び角度解像度が問題となって、その理論モデルには現在取り入れられていないだけでなく、その現象自体のふるまいについても未解明である。そこで、本研究の目的は主に高密度な物質におけるニュートリノ集団振動の非線形挙動や、超新星ニュートリノスペクトルに与える影響の調査である。 今年度は具体的に、物質によるニュートリノの散乱反応がニュートリノ集団振動の漸近挙動にどのような影響を与えるのかを調査した。集団振動のみの場合、ニュートリノのある一定数が電子型と重レプトン型の間で永久的に振動するのに対して、散乱反応を考慮に入れると、その振動が徐々に抑制されてある漸近状態に落ち着いていくことが分かった。さらに、集団振動のみの場合よりも振動によってフレーバーを変えるニュートリノ数が増えたことも特筆すべき結果であった。これらは、超新星爆発などの内部における熱力学状態を大きく変更する可能性があることを示唆する重要な結果である。さらに、散乱反応にエネルギー依存性を考慮すると、本来エネルギーに依存しない性質を持つ集団振動にエネルギー依存性が現れることが分かった。 また、その後散乱反応のみならず、物質によるニュートリノの吸収・放出反応が集団振動に与える影響の調査も行ったところ、散乱とほぼ同様な結論が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は具体的に以下の成果を得られたため、おおむね順調に進展していると考えている。 ・ニュートリノと物質の散乱反応が集団振動に与える影響の調査を行い、それらの結果が査読論文として受理された。 ・ニュートリノと吸収・放出反応が集団振動に与える影響の調査も行って論文にまとめ、現在レビューを待っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画では、まず昨年度と同様にニュートリノ集団振動の基礎研究を継続する。具体的には、ニュートリノ集団振動が超新星爆発内部の熱力学量にどのような影響を与えるのかを議論する。この議論においては、一様バックグラウンドかつ模擬的な吸収・放出反応を考慮した簡易的な状況を用いて、定性的な影響を調査する。続いて、ニュートリノフレーバー数を3つに増やし、実際に超新星爆発で起きているより現実的なニュートリノ-物質反応を取り入れた場合に議論がどのように変更されるのかを考察する。その後、非一様バックラウンドに対するニュートリノ輸送計算が解けるようにコードをアップデートして、その影響について議論し、最終的には、実際の超新星爆発計算によって得られたバックグランドを適用してニュートリノ集団振動がニュートリノ光度やスペクトルにどのような影響を与えるのかを定量的に議論する。
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