2022 Fiscal Year Annual Research Report
価数揺動ハイパーマテリアルの量子臨界現象
Publicly Offered Research
Project Area | Hypermaterials: Inovation of materials scinece in hyper space |
Project/Area Number |
22H04591
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井村 敬一郎 名古屋大学, 教養教育院, 講師 (10444374)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 価数揺動 / 準結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、Yb系価数揺動ハイパーマテリアルにおける電子状態と磁気特性の研究を中心に行った。特にAu-Al-Yb 1/1近似結晶やZn-Au-Yb1/1近似結晶、2/1近似結晶に着目し、Yb価数の圧力依存性をSPring-8 BL12XUにおいて行った。その結果、これらの3つの系は、それぞれ特徴の異なる価数の圧力依存性を示す事が分かった。臨界価数揺動モデルに基づいた整理を行った結果をまとめて、現在論文を作成中である。 Zn-Au-Yb系はAu-Al-Yb系よりも2価成分が強く非磁性である。そのため磁化率が小さく、僅かな不純物相の混入の影響を受けやすく、低温における本質的な効果を見出すことが困難である。そこで新たに、Zn-Au-Yb 準結晶、2/1近似結晶、1/1近似結晶の試料合成を試みた。その結果、従来の試料において見られた不純物相の混入は見られなくなった。これにより、低温磁化率の本質的効果を見ることができた。これらの結果も、価数測定の結果と合わせて論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、SPring-8の非弾性エックス線散乱ビームラインBL12XUを利用した、価数揺動近似結晶Au-Al-YbとZn-Au-Ybにおける圧力下Yb価数測定を行う事ができた。その結果、系や近似度に依存した価数転移を観測する事に成功し、臨界価数揺動理論に基づく相図上で結果を整理することに成功した。また、当初計画段階には無かった他機関との共同研究を行う事で、Zn-Au-Yb準結晶・近似結晶試料の純良化を試みた。その結果、これまでに時折見られた、磁性不純物の混入を取り除くことに成功し、磁気特性の本質的な性質を抽出することに成功した。 一方、Zn-Au-Ybで予定していた圧力下の磁化率測定については、絶対値の小ささや、臨界圧力の高さに起因する測定の困難さに直面しており、目処が立たない状況である。このため、測定手法や(比熱や熱起電力)、対象温度・圧力の変更をする必要がある。具体的には高圧の代わりに、極低温における物性探索を行う事を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、複数のYb系ハイパーマテリアルの電子状態の違いの概形を掴むことができた。今後は、これらに対応し、各種低温物性がどの様に変化するかを調べることで、価数揺動に起因する異常物性について、系統的に理解をすることを試みる。 具体的には、磁化率・比熱・熱電能に着目する。Au-Al-Yb系においては、価数の異常と磁化率の発散異常が同時に発現することが知られている。そのため、価数揺動に起因する物性異常が顕著に見えるプローブであると考えられる。Zn-Au-Yb等の系について、極低温における磁化率の測定を行い、周期性の有無の違いや近似度の違いに対する磁気特性の違いを見出す。但し、これらの系は非磁性であるため、磁化率の異常は小さいと予想される。その場合にはこれに加えて、比熱・熱起電力測定を行う。これにより、Yb系ハイパーマテリアルにおける量子臨界現象と価数異常の関連について統一的な理解を試みる。
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