2022 Fiscal Year Annual Research Report
Local ion conduction analyses at interfaces in solid-state electrolytes
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices |
Project/Area Number |
22H04613
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70560126)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蓄電材料 / 固体電解質 / 界面 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,全固体電池のための固体電解質候補材料内部における種々の欠陥がイオン伝導に及ぼす影響を,分子動力学シミュレーションを用いて解明することを目的としており,具体的に次の2つの課題を設定している:(1)酸化物固体電解質内の粒界イオン伝導抵抗機構の解明,(2)硫化物ガラス・セラミックス内のイオン伝導抵抗機構の解明. 酸化物はLLTO(Li,La,Ti,Oの4元系),硫化物はLPS(Li,P,Sの3元系)を対象系として採用し,メタヒューリスティクスなパラメータ最適化手法を用いて,バルクにおけるLiイオン伝導度やイオン存在確率密度などが第一原理計算を再現する原子間ポテンシャルを構築した.その過程において汎用的なパラメータ最適化手法のプログラムを改良して公開した(optzer). 硫化物の結晶相がガラス相内部に存在するガラス・セラミックスの大規模構造モデルを作成し,Liイオンに外場を与えて駆動する非平衡分子動力学シミュレーションを行い,結晶・ガラス・界面のどこでどのようにLiイオンが伝導しているか解析を行った.ガラス相内におけるLiイオン伝導が全体のそれを決定することが明らかとなり,結晶相や結晶・ガラス界面におけるイオン伝導度の寄与は二次的であることが示された.また,ガラス相におけるSイオンネットワークのトポロジカル解析と局所Liイオン伝導解析結果をあわせることで,Sイオンネットワークが作る多面体のサイズと局所イオン伝導とに相関があることがわかった.これらの結果は新学術領域会議にて報告し,現在論文執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の課題としてまずは,(1)酸化物固体内の粒界イオン伝導抵抗機構解明と(2)硫化物ガラスセラミックス内のイオン伝導機構解明に共通する,原子間ポテンシャル構築に関するプログラム開発および整備と,各材料組成のポテンシャル開発を行った. まず,原子間ポテンシャル・パラメータによる微分が不可能な教師データに対してパラメータ最適化を行うことの可能な,汎用的パラメータ最適化プログラム(optzer)を作成した.これまでのメタヒューリスティクス手法に加え,ベイズ的な手法も加えて広域探索的・効率的局所探索的など複数の最適化アプローチを可能とした. 上記プログラムを用いて,酸化物LLTOと硫化物LPSの原子間ポテンシャルを構築し,それぞれイオン拡散係数などの要求する物理量を十分に再現することを検証した. 構築したポテンシャルを用いて,硫化物の結晶・非晶質混在系の大規模モデルの非平衡分子動力学シミュレーションを行い,Liイオン流の解析を行い,流れの速い箇所・遅い箇所をオングストロームスケールの空間解像度で得た.またSイオンのネットワーク解析を行い,Sイオンネットワークと局所イオン流れの解析を行い,Sイオンからなる空間とLiイオン流れとの相関を解析した.これに加え,LiイオンとPS4四面体の動的な相関(パドル・ホイール機構)を明らかにするため,LiイオンとSイオンの振動数解析を行った.振動数解析と局所イオン伝導の関連を明確にするために,PS4四面体ユニットに分解した振動数の解析を行い,局所構造とパドル・ホイール機構,局所イオン伝導の相関を明らかにするため得られた解析データの検証を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の局所構造(Sイオンネットワーク)とLi-PS4四面体の動的相関および局所イオン伝導の相関を明らかにし,LPSガラス系におけるイオン伝導機構の原子スケールからの理解を深化させる.そのために,局所的なLiイオンとSイオンの動的相関を解析する手法を開発する.これまでに一つのSイオンの速度自己相関関数(VAC)のスペクトルを計算しても十分な統計性が得られず,満足にLi-S動的相関が計算できないことが分かっているため,PS4ユニット毎のSイオンのVACスペクトルを考えて統計性が得られるか検証を進める.また,Li-Sの非自己相関関数も考慮することで,Li-S動的相関を明らかにしてパドル・ホイール機構の寄与率を明確にする.これまでに得られている局所イオン伝導とSイオンネットワークと上記局所相関関数の相関を調べることで,Liイオン伝導に寄与するガラス中の原子構造を解明する. また,酸化物LLTOの大規模粒界モデルを作成し,非平衡MDシミュレーションから粒界における局所イオン伝導度を解析する.いくつかの異なる粒界における局所イオン伝導解析から,イオン伝導抵抗に寄与する原子構造を特定し,抵抗に寄与する物理的要因を明らかにする.TiをNbに置き換えたLLNbO系の原子間ポテンシャルも作成し,Nbの粒界偏析傾向,Nb近傍におけるLiイオン伝導傾向を詳細に解析することで,Nb添加による粒界イオン伝導の抵抗低減機構について検討する.
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