2022 Fiscal Year Annual Research Report
結晶/非晶質界面を制御した高リチウムイオン伝導性蓄電固体材料の液相合成
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices |
Project/Area Number |
22H04614
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
引間 和浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50845617)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全固体電池 / 液相合成 / 硫化物固体電解質 / 結晶/非晶質界面 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、領域内での高度解析や計算科学との連携により界面構造とイオン伝導性の相関を明らかにして、高いLiイオン伝導性を有する硫化物系固体電解質を得ることを目指している。2022年度は乾燥と結晶化の工程を分離し、結晶化過程の精密制御を試みた。また、前駆体粉末の熱処理では、大気非暴露Ar フロー管状炉を設計・製作することで精密に熱処理過程を制御し、高いイオン伝導性を示すLi2S-P2S5-LiI系固体電解質の合成を目指した。 Li2S-P2S5-LiI系固体電解質について、粉末状でホットプレートもしくはArガスフロー管状炉で熱処理した試料では、出発原料であるLiI、Li2Sに由来するピークが観察された。一方、成形してから管状炉で熱処理した試料では、出発原料に由来するピークは確認されなかった。これは、ペレット状に成型してから熱処理することで前駆体粒子同士の密着性が増加し、反応が促進したためだと考えられる。また、22°や27°付近にLi4PS4Iに帰属されるピーク、19°付近に高イオン伝導相とされるThio-LISICON Ⅱのピークが観測された。ホットプレート上で熱処理した試料と比較し、成型後に管状炉で熱処理した試料では、より高強度なThio-LISICON Ⅱの回折ピークが得られた。以上より、熱処理工程の最適化により結晶化が促進したと推測される。この試料の室温におけるイオン導電率は、約1 mS cm-1と比較的高い値を示した。また、他機関と連携して放射光XRD、TEM、PDF解析などを行い、結晶・非晶質成分の解析を行った結果、合成したLi2S-P2S5-LiI系固体電解質は、Li4PS4I、LiI、Thio-LISICON II及び非晶質からなるガラスセラミックスであることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
領域内での高度解析や計算科学との連携により界面構造とイオン伝導性の相関を明らかにし、高いLiイオン伝導性を有する硫化物系固体電解質を得ることを目指し、以下に示す成果が得られている。そのため、これまでの研究は順調に進展していると言える。 ・Li2S-P2S5-LiI系固体電解質の液相合成 乾燥と結晶化の工程を分離し、結晶化過程の精密制御を試みた。また、前駆体粉末の熱処理では、大気非暴露Arフロー管状炉を設計・製作することで精密に熱処理過程を制御し、高いイオン伝導性を示すLi2S-P2S5-LiI系固体電解質の合成を行った。成形後に管状炉で熱処理した試料では、出発原料に由来するピークは確認されなかった。これは、ペレット状に成型してから熱処理することで前駆体粒子同士の密着性が増加し、反応が促進したためだと考えられる。また、22°や27°付近にLi4PS4Iに帰属されるピーク、19°付近に高イオン伝導相とされるThio-LISICON Ⅱのピークが観測された。この試料の室温におけるイオン導電率は、約1 mS cm-1と比較的高い値を示した。 ・領域内連携による高度解析 他機関と連携して放射光XRD、TEM、PDF解析などを行い、結晶・非晶質成分の解析を行った。合成したLi2S-P2S5-LiI系固体電解質は、Li4PS4I、LiI、Thio-LISICON II及び非晶質からなるガラスセラミックスであることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度ではLi2S-P2S5-LiI系固体電解質の液相合成法の改良により、室温導電率1 mS/cmを示す固体電解質の合成、領域内連携による高度解析により結晶/非晶質成分の解析を行った。2023年度では、中性子回折測定による構造解析を進める。また、7Liを6Liに同位体交換したサンプルを用いてNMR測定を行うことで、ガラスセラミックス中のイオン伝導経路を明らかにする。さらに、より高い導電率を示すLi2S-GeS2-P2S5系固体電解質へと展開する。従来の液相合成法に加えて、硫黄を過剰に添加した溶液処理技術を適用し短時間合成を目指す。なお、Li2S-GeS2-P2S5系固体電解質についても、放射光XRD、TEM、PDF解析などを行い、結晶・非晶質成分の解析を行う予定である。
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