2022 Fiscal Year Annual Research Report
特異的作用場としての芳香族高分子による塩の非晶・超イオン伝導化
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices |
Project/Area Number |
22H04623
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
畠山 歓 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (90822461)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高分子固体電解質 / 全固体二次電池 / マテリアルズ・インフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
分極性の高分子とリチウム塩の界面相互作用を鍵とする固体電解質の創製と学理解明が本研究の目的である。これまでに、ガラス状のポリマーを媒体にリチウム塩を添加した有機イオン伝導体を合成し、その分子構造とダイナミクス解明に取り組んだ。例えば電荷移動錯体型のポリマーと対称性を落としたスルホニルイミド系のリチウム塩が相互作用することで、塩がアモルファス相へと変位し、高いイオン伝導度とリチウム輸率を実現できることが分かった。高い安全性と高いエネルギー密度を実現する固体電解質を開発するために必要な、新たな分子設計の指針が明らかになりつつある。 本研究の主な目的の1つは、当該電解質の構造とイオン伝導性の関係を明らかにすることである。高伝導の鍵となる因子は塩のアモルファス化であり、電荷移動複合体との相互作用によってそれが誘起されることが示された。 合成した固体電解質を用いたリチウムイオン電池の動作検証にも予備的に取り組んだ。最適な電解質・デバイス条件を検討した上で、プロトタイプ電池を試作した。例えばリチウム鉄リン酸塩カソードとリチウムチタン酸アノードを用いた全固体リチウムイオン電池を試作した。本電池は1.9Vの標準電圧で可逆的に動作した。さらに、電解質のリチウム輸送能が高かったことから、1 mA/平方センチを超える高い電流密度においても充放電反応が進行することが明らかになった。 一連の成果は学会発表や査読付き学術論文誌で報告した。さらなるイオン伝導性の向上や安定性の確保などの問題点が残されていることから、23年度はその課題解決のための基礎学理の究明に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の研究計画に従って、おおむね順調に進展していると言える。その理由は以下の通りである。 a)ガラス状有機イオン導体の動作実証: ポリマー型の電荷移動複合体と相互作用したアモルファス塩相により、高いイオン伝導と高いリチウムイオン輸率を両立した電解質を実験実証できた。 b)固体電解質の構造とイオン伝導性の関係の解明: アモルファス塩相が高いイオン伝導を誘起するメカニズムを部分的に解明した。これにより、有機材料によって固体電解質の伝導度を向上させるのための新たな分子設計の指針が明瞭になりつつある。 c)全固体リチウムイオン電池の試作:試作した電池は正負極の電位差に対応する標準電圧で可逆的に動作し、高い電流密度においても充放電反応が進行することを示せた。 これらの理由から、本研究はおおむね順調に進展していると結論付けられる。引き続き、高い伝導度を示す機構の詳細を明らかにする研究を推進することで、新たな成果集積を見込める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、以下の課題に取り組む予定である。 a)分子設計の多様化: 22年度の研究を通し、ポリマーの分極性が高伝導化の鍵であることが明らかになった。従って、電荷移動錯体以外の高分子設計への展開可能性を検討することが新規課題として抽出された。例えば、何らかの極性基を持つ非芳香族ポリマーを合成することで、芳香族系と同等のイオン伝導度を発現できる可能性がある。 b)種々の構造解析手法の導入: 固体電解質の高い伝導度に寄与する本質的な因子を明らかにするため、領域内連携を通じて固体条件での核磁気共鳴(NMR)や電顕観察などの種々の構造解析手法を追加導入する。これにより、固体電解質の構造とイオン伝導性の詳細な関係を解明し、最適な分子設計指針に繋げることが可能となる。 c)界面制御手法の探求: 固体電解質と電極材料の界面制御は、デバイス特性を規定する重要因子である。特に有機材料はリチウム負極との安定性が必ずしも高くないことから、緩衝層の導入といったアプローチが有効な可能性がある。今後の研究課題の1つとして注力しながら推進する。
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Research Products
(11 results)