2022 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質の選択的リソソーム分解を介した新規品質管理機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multimode autophagy: Diverse pathways and selectivity |
Project/Area Number |
22H04636
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 裕輝 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (50879971)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | TOLLIP / 膜タンパク質 / 小胞体ストレス / ER-phagy |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究代表者が発見した不良膜タンパク質のリソソーム分解を担う新規カーゴアダプターTOLLIPについて、その作動原理を解明することを目指している。 今年度の解析の結果、TOLLIPによる基質認識には新規機能領域IDR(intrinsically disordered region)が重要であることを見出した。具体的には、ミスフォールドタンパクのモデルとして汎用される熱変性ルシフェラーゼを用いてin vitro binding assayを行ったところ、リコンビナントIDRフラグメントが熱変性ルシフェラーゼを直接認識することを見出した。また、IDRフラグメントはVAPBやSeipinなどの膜タンパク質について、ミスフォールドして封入体を形成する疾患変異体特異的に認識することから、IDRはタンパク質のミスフォールドを感知するドメインであることが示唆された。さらにTOLLIPのIDRをGlyおよびSerだけからなるフレキシブルなリンカーに置換した変異体は不良膜タンパク質のリソソーム分解を促進できなかったことから、TOLLIPのIDRを介した基質認識は、基質の分解に重要であることが示唆された。 また、TOLLIP依存的な不良膜タンパク質のリソソームへの輸送にはオートファゴソーム形成関与因子(FIP200、ATG7)およびER-Golgi間輸送(COPII)が関与しないことを見出した。従って、TOLLIPは基質をERからリソソームへと何らかの直接的な小胞輸送を介して輸送していることが示唆される。そこで現在は、基質-TOLLIP複合体がERからリソソームへ移行する経路を探索するために、split-TurboID法を用いて基質-TOLLIP複合体のインタラクトーム解析を行うことを目指し、その実験条件の最適化作業を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究成果の一部は、既に国際学術誌へ投稿済みであり、現在査読中である。さらに、その発展課題としての基質-TOLLIP複合体のインタラクトーム解析に向けた準備も順調に進んでいるためこの評価区分とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題1)不良膜タンパク質のER-リソソーム間輸送機序の探索 基質-TOLLIP複合体がERからリソソームへ移行する経路を探索するために、split-TurboID法を用いて基質-TOLLIP複合体のインタラクトーム解析を行う。TOLLIP依存的に分解される不良膜タンパク質基質およびTOLLIPそれぞれにTurboIDの断片を付加したコンストラクトを作製し、これを用いて基質-TOLLIP複合体の近傍タンパク質を良好にビオチン化できることは既に確認済みである。次年度は、基質-TOLLIP複合体の近傍タンパク質をLC-MS/MSで同定し、ER-リソソーム間輸送に関与する因子の同定を目指す。 課題2)TOLLIP依存的経路の内在性基質の探索 TOLLIP欠損細胞ではプロテアソーム阻害などで小胞体に負荷がかかった際の小胞体ストレスが顕著に惹起されやすくなり、従ってTOLLIPは内在性膜タンパク質の分解を介してタンパク質恒常性維持に重要な役割を果たす可能性が示唆された。次年度は内在性基質の網羅的同定をLC-MS/MSを用いて行い、TOLLIP経路の生理的意義の理解を目指す。
|