2022 Fiscal Year Annual Research Report
全能性消失時における新規エンハンサー作用機序の統合的理解
Publicly Offered Research
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
22H04665
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深谷 雄志 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (00786163)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エンハンサー / 初期胚発生 / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエ初期胚における全能性消失過程をモデルとして、遠位エンハンサーがどのようにプロモーターと相互作用し、胚性遺伝子の転写を活性しているのかという基本原理の解明に取り組んだ。人工的に設計したレポーター遺伝子を用いた転写ライブイメージング解析により、遠位エンハンサーからの転写活性化効率を規定する複数の機能的なパラメーターを明らかにすることに成功した。具体的には、エンハンサーの転写活性化効率は1)エンハンサー内の転写因子結合部位の数や2)プロモーターとの距離に応じて非線形状に変化するという新たな知見を得ることに成功した。重要なことに、ショウジョウバエ初期胚では、CTCF やcohesinといった既知のゲノム構造化因子を必要とせずに、エンハンサーがプロモーターと相互作用し、標的遺伝子から転写バーストを誘導できることを明らかにした。この結果は、エンハンサーに結合する転写因子やコアクティベーター自身が遠位からの転写バーストの誘導を担う真の責任因子であることを強く示唆している。来年度は、超解像顕微鏡など新たな解析手法を導入することで、エンハンサー作用時のより詳細な分子機構の解明を進めていく。さらにゲノム編集技術を導入し、個体レベルでの表現型解析についても並行して進めていく予定である。以上の成果は、多細胞生物の全能性消失過程における転写制御プログラムを理解する上で重要な知見となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レポーター遺伝子を用いた転写ライブイメージング解析と定量画像解析を組み合わせることで、遠位エンハンサーが標的遺伝子を活性化する際の基本的な作用機序を見出すことに成功した。上記実績の概要に記載した通り、CTCF やcohesinといった既知のゲノム構造化因子に非依存的な形式で、エンハンサーが機能発揮していることが、ショウジョウバエ初期胚で明らかになった。加えて、エンハンサーの転写活性化効率は1)エンハンサー内の転写因子結合部位の数や2)プロモーターとの距離に応じて非線形状に変化するという重要な知見を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、全能性消失時におけるエンハンサーの転写活性化効率を規定するより詳細な分子メカニズムの解明に取り組む。特に、多くの転写因子が有する天然変性領域の役割や、転写因子そのもののタンパク質動態に焦点を当て、定量的なイメージング解析を推進する。加えて、明らかとなった分子メカニズムの破綻がどのように、その後の個体発生に影響を与えるのかについて、生理的な機能を解析する。以上によって、全能性消失時のエンハンサー作用機構の統合的な理解を得る。
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