2022 Fiscal Year Annual Research Report
全能性関連遺伝子の発現におけるエピゲノムと転写因子の貢献度の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
22H04671
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
立花 誠 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (80303915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全能性 / 二細胞期特異的遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2細胞期に特異的に活性化する遺伝子(2C 遺伝子)は、全能性を担保する遺伝子として注目されている。私たちはごく最近、ヘテロクロマチンの代表的タンパク質であるHP1 を欠損させたマウスES 細胞では、H3K9メチル化酵素群がタンパク質分解され、① 2C 遺伝子の脱抑制、② H3K9me2/3 の低下、③ 転写因子Dux の脱抑制が起きることを見出した(Maeda and Tachibana, EMBO rep. 2022)。この知見にもとづき本研究提案では、2C 遺伝子の活性化におけるH3K9 メチル化エピゲノムとDux の貢献度を明らかにする。 研究テーマその1 2C遺伝子の抑制におけるH3K9メチル化酵素の貢献度の解明:ほ乳類にはSuv39h1, Sub39h2、GLP/G9a複合体、Setdb1の4種のメチル化酵素が存在する。これらの各H3K9メチル化酵素をそれぞれ単独、二重、三重、四重に欠損したES細胞株を作製し、2C遺伝子の脱抑制における各酵素の欠損の貢献度を数値化する。2022年度の成果:これらの欠損株の解析により、2C遺伝子のマスター活性化因子であるDuxは、Suv39h1, Sub39h2、GLP/G9a複合体、Setdb1の4重欠損変異体で最も強く活性化することを明らかにした。 研究テーマその2 2C遺伝子の脱抑制におけるDuxの貢献度の解明:私たちは、HP1欠損細胞における2C遺伝子の脱抑制は、エピゲノム(H3K9me2/3低下)と転写因子(Dux)との双方が相乗的に寄与しているとの仮説を立てた。この検証のため、あらかじめDux遺伝子クラスターを破壊したES細胞で一定量のDuxの発現を誘導できるES細胞株を樹立し、2C遺伝子の活性化におけるエピゲノムとDuxの貢献の度合いを明らかにする。2022年度の成果:Duxを誘導する細胞株を樹立して解析したところ、Duxの下流遺伝子の抑制に最も強く貢献しているヒストンメチル化酵素はG9aであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマその1 2C遺伝子の抑制におけるH3K9メチル化酵素の貢献度の解明:ほ乳類に存在するH3K9メチル化酵素であるSuv39h1, Sub39h2、GLP/G9a複合体、Setdb1の4種について、単独、二重、三重、四重に欠損したES細胞株を作製することができたことは、大きな進捗である。さらに、2C遺伝子のマスター活性化因子の発現を調べたところ、これらのH3K9メチル化酵素の全てが相乗的に抑制していることが明らかになった。このように、研究テーマその1については、2022年度の研究達成目標である、H3K9メチル化酵素の各変異体、およびそれらの組み合わせの変異体を樹立することができたので、順調な進捗状況であると判断した。 研究テーマその2 2C遺伝子の脱抑制におけるDuxの貢献度の解明:あらかじめDux遺伝子クラスターを破壊したES細胞で一定量のDuxの発現を誘導できるES細胞株を樹立することができた。さらに、この細胞を使って2C遺伝子の活性化におけるエピゲノムとDuxの貢献の度合いを調べた結果、2C遺伝子の発現活性化にはG9aが負に働いていることを見出した。この結果は、2C遺伝子の脱抑制は、エピゲノム(H3K9me2/3低下)と転写因子(Dux)との双方が相乗的に寄与しているとの私たちの当初の仮説を裏付けるものであった。このように、研究テーマその2についても、必要な実験材料の樹立や、それを用いた実験結果もリーズナブルなものであったため、順調な進捗状況であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究テーマその1 2C遺伝子の抑制におけるH3K9メチル化酵素の貢献度の解明:ほ乳類に存在するH3K9メチル化酵素であるSuv39h1, Sub39h2、GLP/G9a複合体、Setdb1の4種について、単独、二重、三重、四重に欠損したES細胞株を作製することができたので、既にこのプロジェクトは完了している。 研究テーマその2 2C遺伝子の脱抑制におけるDuxの貢献度の解明:あらかじめDux遺伝子クラスターを破壊したES細胞で一定量のDuxの発現を誘導できるES細胞株を使い、2C遺伝子の活性化におけるDuxとH3K9脱メチル化の貢献の度合いを調べた結果、2C遺伝子の発現活性化にはG9aが負に働いていることを見出した。今後は、2C遺伝子のどのような部分(エンハンサー、プロモーター、ジーンボディ)にG9aによるメチル化が入っているのかを明らかにする必要がある。この解析のためには、ショウジョウバエS2細胞を混ぜ込んだSpike-in-ChIP解析の実験系を樹立する必要があり、現在条件検討を行っている。さらに、H3K9me1/2/3、H3K4me2/3、H3K27me3などのエピゲノム解析のためのChIP-seqに最適な市販抗体を、現在スクリーニングしている。これらが完了し次第、Spike-in-ChIP解析を進める。
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