2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on protein degradation via N-end rule and arginylation in embryos acquiring totipotency.
Publicly Offered Research
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
22H04681
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
黒坂 哲 近畿大学, 先端技術総合研究所, 講師 (30625356)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 初期胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、配偶子や初期胚においてアルギニル化されてN末端則経路を介して分解されるタンパク質の同定が必須である。このようにして分解されるタンパク質において最もメジャーにみられるアルギニル化は、N末端のアスパラギン酸あるいはグルタミン酸へのアルギニンの結合である。そこで、2022年度に実施した研究では、マウス卵母細胞および初期胚においてN末端のアスパラギン酸またはグルタミン酸がアルギニル化されているタンパク質を同定した。これらの多くは、アルギニル化型として検出された発生ステージの次のステージでは検出されないか非アルギニル化型で検出された。このことは、アルギニル化型のタンパク質がN末端則経路を介して分解されることを示唆しており、初期胚発生における母性タンパク質分解についての新たな知見につながる結果である。 さらに、アルギニル化が初期発生に必要であるかを明らかにするために、生殖細胞特異的ATE1ノックアウトマウス(ATE1-CKOマウス)から得られた卵母細胞を用いたIVF胚の解析を試みたが、ATE1-CKOマウス由来の卵母細胞の全てでATE1の発現がみられ、ATE1を欠失した肺を得ることができなかった。この結果は、このマウスの生殖巣においてATE1の欠失からのがれた生殖細胞のみが排卵されたことを示しており、雌性配偶子形成においてATE1が必須であることを示唆している。このことは、母性タンパク質分解と全能性のかかわりを明らかにするという本研究の目的とは少し外れることになるが、雌性配偶子形成に関する研究に新たな方向性を示すものとなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ATE1-CKO雌マウスからATE1欠失卵母細胞を得る計画であったが、期待通りの表現型ではなく、ATE1欠失卵母細胞を得ることができなかったため、RNAiやTrim-AwayによってATE1を枯渇させた卵母細胞を得ることができるまでATE1欠失卵母細胞由来の胚を用いた解析を進めることが不可能であった。 RNAiとTrim-Awayは当初の計画に含まれており、これらによってATE1-CKO卵を用いる場合と同様の解析が可能であるため、本研究の目的達成への影響はない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で、マウス初期胚において、アルギニル化されてN末端則経路を介して分解されるタンパク質の候補(以下、候補タンパク質とよぶ)を検出することができたので、これらのタンパク質の分解と初期発生のかかわりを調べる。また、生殖細胞特異的アルギニン転移酵素(ATE1)ノックアウトマウスの卵母細胞を用いた実験からは期待した結果が得られなかったため、2023年度はRNAiやTrim-AwayによりATE1を枯渇させた卵母細胞や受精卵を用いた実験を進める。 1) 候補タンパク質の非アルギニル化変異体の挙動:それぞれの候補タンパク質について、アルギニル化が起こる残基を同定しているので、それらの残基を置換することによりアルギニル化が起こらない変異体を作製して卵母細胞あるいは受精卵に導入し、その変異体の挙動、特に分解や、変異体を導入された胚の発生能を調べる。 2) ATE1枯渇卵母細胞におけるタンパク質分解および候補タンパク質の挙動:RNAiやTrim-AwayによりATE1を枯渇させた卵母細胞あるいは受精卵を作製し、初期発生におけるタンパク質分解や候補タンパク質の挙動を調べる。タンパク質分解については、ATE1枯渇区と対照区でプロテオームの結果を比較する。候補タンパク質の挙動については、それぞれの候補タンパク質に特異的な抗体を用いてウエスタンブロッティングや免疫染色で解析する。 3) ATE1枯渇卵母細胞由来の胚の発生能:ATE1枯渇卵母細胞を用いた体外受精胚の発生能を調べることにより、初期発生におけるアルギニル化の必要性を明らかにする。
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Research Products
(1 results)