2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞極性の自律周期的形成とその変調が導出するオーキシン極性輸送システム
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
22H04708
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
楢本 悟史 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30612022)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | オーキシン / 極性 / PIN / 相分離 / クラスター / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
種子植物は細胞分裂を繰り返して発生・成長をする。発生・成長に際しては、細胞極性や体軸の構築が必須であるが、種子植物では、オーキシンが極性輸送されることで、体軸が構築される。また、オーキシン流路は細胞において偏在するオーキシン排出トランスポーターPINにより決定される。 PINは細胞分裂直後、一過的に誤局在をするが、その後、偏在が再構築される。すなわち、細胞分裂を通して、周期的に偏在が再構築される。以上の発生・成長様式に加え、植物は器官を構築する過程や、光・重力などの環境に応答する際にオーキシン流路が変化する。本研究では、これらの様式をオーキシン流路形成の周期性と変調と捉え、研究を行った。周期性に関しては、細胞分裂時のPINの挙動について詳細な解析を行ったところ、PINが細胞分裂期に多量体様のクラスター構造を周期的に形成することが明らかになった。このクラスター構造は、細胞分裂直後では未形成であるが、細胞分裂後しばらくすると、クラスターが再構築されることが明らかになった。また、このクラスター構造は、生物学的相分離の様式を経て形成されることを示唆する結果も得られた。相分離で形成される構造体は、イオン強度の変化やリン酸化状態に応じて、構造体の形成・解離が引き起こされる。そこで、これらの関与を調べたところ、塩イオン濃度の変化に応じて、クラスターの量が低下する可能性が示唆された。加えて、本現象が植物体の生命現象、たとえば塩屈性と直接関係があるかどうかについても解析を行った。また、重力屈性も塩屈性と類似した現象であり、PINクラスター形成の制御の下で、発動する可能性がある。そこで、塩屈性に加え、重力屈性過程のクラスターの挙動の観察も行った。その結果、再現性などを今後確認する必要はあるが、クラスター形成と屈性には密接な関連があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
塩屈性や重力屈性をリアルタイムで観察する実験系の確立が容易ではなかったため、実験が遅れました。本来は塩屈性や重力屈性を共焦点レーザー顕微鏡下で誘導することを試みたが、その条件検討に時間がかかった。厳密には、未だ改善の余地のある実験系のままになっている。そこで、まずは、リアルタイムのトラッキング観察ではなく、刺激の前後でサンプルを固定し、それらの植物を用いた細胞生物学的解析を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
塩屈性や重力屈性をリアルタイムで観察する実験系の確立を目指す。それには、共焦点レーザー顕微鏡を横倒しをすることが必要であるが、これまでに観察過程でのステージの安定性に問題があった。今後、安定性を担保できるジグを導入することで、対応していきたい。また、塩屈性を誘導するにあたり、マイクロ流路デバイスを利用する予定である。塩屈性を制御するマイクロデバイス自体は、これまでに報告があるため、それを参考に作成したい。
|