2022 Fiscal Year Annual Research Report
根の成長を制御する周期と変調の分子基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
22H04722
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高橋 直紀 明治大学, 農学部, 専任准教授 (40553623)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 根 / 植物ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の根は水分や養分を吸収するとともに、植物体全体を支える重要な器官であり、その伸長は植物体全体の成長を大きく左右する。環境に応じた根の伸長は、根端メリステムでの周期的な細胞増殖と、その変調による細胞分化への転換のタイミングにより決まることから、多様かつ柔軟な根の周期形態を理解する上で、この一連の過程を分子レベルで理解することは重要な研究課題である。本研究では、植物ホルモンによる根の成長を制御する周期性の基本原理と、それらの変調が生み出す細胞分化の分子実態の解明を目指す。 シロイヌナズナは、ストレスを受けると根端ではサイトカイニンシグナルが活性化し、オーキシンシグナルが低下することで、根端メリステムでの細胞増殖が抑制され、細胞分化への移行が促進する。本年度は、DNA 損傷ストレスを受けると、オーキシンシグナルの抑制に関わるAUX/IAAファミリー遺伝子が早期に誘導されることを見出した。そ して、AUX/IAAファミリー遺伝子はストレスに応答して、根の幹細胞領域で特異的に発現し、幹細胞でのオーキシンシグナルを抑制することで、幹細胞特異的な細胞死の誘導に関与していることを 明らかにした。さらに、幹細胞特異的にAUX/IAA遺伝子を発現させると、細胞死の誘導が促進されることも見出した。以前までに、DNA損傷を受けると、根の移行領域でサイトカイニンシグナルが活性化することで、オーキシン排出輸送体である複数のPINの発現が低下し、根端でのオーキシン量が低下することを明らかにしている。そこで、サイトカイニンによるオーキシンの低下も幹細胞の細胞死の誘導に関わっているか調べたところ、AUX/IAAとは独立に幹細胞の細胞死誘導に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根の幹細胞の細胞死にオーキシンシグナルの変化が重要な役割を果たしていることを新たに見出したことから、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレスを受けると、ブラシノステロイドシグナルが根端の幹細胞ニッチで活性化することを見出している。また、ブラシノステロイド受容体変異体では、DNA 損傷による細胞死が抑制されることも明らかにしている。以前までに、オーキシンシグナルとブラシノステロイドシグナルがクロストークすることが示唆されていることから、植物ホルモン間の関係を明らかにすることで根の成長を制御する分子実態の解明につなげる。
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Research Products
(2 results)